昨年8月、誤嚥(ごえん)により、軽度の小脳出血を起こして入院し、同11月に退院した加山雄三(83)をインタビューする機会があった。加山は11日に、音楽活動再開となる配信シングル「紅いバラの花」をリリースする。

筆者と加山の年の差は、約60だ。こんな若造が、大御所の方にインタビューするなんて、めったにない機会だと思い、事前に失礼のないように、しっかり準備をした。だが、怖いと勝手に持っていたイメージは、インタビュー部屋に入った瞬間になくなった。

インタビュー部屋に入ると、ふ菓子をほお張りながら、元気な笑顔で迎えてくれた。そして、「座って食べようよ」と優しく声を掛けてくれた。芸能界で長く活躍している人なのに、こんなにも優しく対応してくれるなんて…と感激に浸った。

そして、ふ菓子を食べながら、インタビューがスタートした。加山は「体調はすこぶる良いんだけど、しゃべるのは70%くらいかな。ギターの指の細かいのが弾けないんだよね」と、現在の体調について話した。

療養中は、ファンの存在がなによりの活力になったという。「どう思っていらっしゃるのか。なんとか元気な姿で戻れたら。俺は元気だと早く言いたいな。そればかり考えていた」。

そして「皆さんあっての俺なんだから。ファンの人がいなければ、いくら俺が曲出してもだめ。聞こうとしてくださる人がいて、ステージやれば、お客さんが来てくださって、一生懸命歌う。それで、相乗効果が生まれる。それをありがたいと思わなければ、どうするんだって」と笑った。

「感謝と努力」、この2つをずっと大切にしてきたという。今後の目標を聞くと「俺は、94くらいまでは間違いなくやるよ。あと10年くらい。10年くらいはなんとかなると思うんだ」と言い切った。

そして「声は今も変わっていないから。音楽もまだ出てくるし、聞いてくれるうちは、作っていくのが自分の生きがい。音楽を愛してきてよかったなって思う。いつになっても、いいなっていうのを作って、出すべきだよね」。

常に前を向いて努力を続ける加山にインタビューできたことは、記者冥利(みょうり)に尽きる経験だった。【佐藤勝亮】