世界3大映画祭の1つ、カンヌ映画祭(7月6日開幕)事務局は23日(日本時間24日)カンヌクラシック部門の上映作品を発表し、日本映画史に残る女優であり、映画監督でもあった田中絹代さんの監督第2作「月は上りぬ」(55年)を上映すると発表した。

カンヌ映画祭は公式サイトで、田中さんを「女優兼映画監督」と紹介。田中さんが53年の初監督作「恋文」を同映画祭に出品したと説明した上で「日本を代表する女優の1人・田中絹代さんは54年、53年の最初の監督作を54年にカンヌ映画祭コンペティション部門に出品。61年と64年には女優としても映画祭に帰ってきています。田中さんは、日本映画の黄金時代に活躍した、唯一無二の映画制作者であり、今回、上映する監督2作目からも、その計り知れない才能がうかがえます」と紹介した。

「月は上りぬ」は、戦中に東京から奈良に疎開した父と3姉妹の家族・浅井家の日常と3姉妹の恋愛模様が描かれる。父茂吉を笠智衆さん、長女千鶴を山根寿子さん、次女綾子を杉葉子さん、三女節子を当時、北原三枝の芸名で活躍していた、石原まき子さんが演じた。今回、上映するのは、製作の日活が保存していたオリジナルの35ミリフィルムを4Kで修復したものだという。

カンヌクラシックは、映画史に残る名作を復刻版で紹介することを目的に、2004年に立ち上げられた部門。田中さんは1977年(昭52)に67歳で亡くなったが、没後半世紀が過ぎた近年、出演、監督作ともに海外で再評価されている。20年のロカルノ映画祭(スイス)で開催された、女性をテーマにした回顧展で作品が取りあげられた。またカンヌ映画祭公式サイトも「4Kで修復された6本の映画による、回顧展が予定されています」と紹介している。