歌手で俳優の中村雅俊(70)が、デビュー48年目で初めてフルオーケストラと共演する全国4都市ツアー「ビルボードクラシックス 中村雅俊 Symphonic Live 2021」に挑む。8月28日の兵庫・西宮からスタートし、名古屋、熊本、東京で「ふれあい」「俺たちの旅」「恋人も濡れる街角」などのヒット曲を壮大な演奏をバックに熱唱する。新たな挑戦への意気込み、今までの足跡について聞いてみた。

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1982年(昭57)9月1日に発売された17枚目のシングル「恋人も濡れる街角」は、サザンオールスターズの桑田佳祐(65)が作詞・作曲。同年10月公開の角川映画「蒲田行進曲」(深作欣二監督)の主題歌に起用された。

「当時、角川映画の音楽は日本コロムビアがやっていたんですよ。それで桑田君が俺に曲を書いてくれることになった時に、レコード会社の戦略でしょうね。『蒲田行進曲』の主題歌になったんですよ」

76年公開の「犬神家の一族」から始まる角川映画は、版元の角川書店の総帥・角川春樹氏(79)が指揮を執る原作と映画の大プロジェクト。映画の主題歌も77年のジョー山中「人間の証明のテーマ」、81年の南佳孝「スローなブギにしてくれ」、映画「ねらわれた学園」の松任谷由実「守ってあげたい」、薬師丸ひろ子「セーラー服と機関銃」と大ヒットして音楽界も席巻していた。

「『蒲田-』は角川映画なんですけど、2本立ての中の1本でした。コロムビアでタイアップをお願いして実現したんだと思います。だけど映画を見たら主題歌の割に存在感が薄いんですよ。踏切のシーンで松坂(慶子)さんが行くところでちょっと流れるくらい。『深作監督! そりゃないよ~』って感じでね(笑い)。これじゃ、まずいと。ちょうどその頃、フジテレビで俺の主演ドラマ『おまかせください』が始まり、『恋人も濡れる街角』のB面曲で、同じく桑田君が作ってくれた『ナカムラ・エレキ音頭』が主題歌、『恋人も-』は挿入歌になったんです。だけどどうしても『恋人も-』をプッシュしたかったので、途中から主題歌に変えたんです。絶対に売らなきゃなっていう意気込みがありました」

「恋人もー」は、発売してから3カ月たってから売れ始め、翌83年には50万枚近くを売り上げた。

「『恋人も-』が売れて、すごくみんなで大喜びしましたね。最初は桑田君に申し訳が立たないなと思っていましたから。桑田君には80年に主演した角川映画『刑事珍道中』の主題歌『マーマレードの朝』という曲も作ってもらっていたんですけど、それがあまり売れなかったということもあったので。この頃はすでに『心の色』で『ザ・ベストテン』(TBS)にも出演して勢いもあったのですが、『恋人も-』は発売して2カ月はほとんど動きがなかったんですけど、3カ月くらいたった時にようやくヒットしました」

(続く)【小谷野俊哉】

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◆中村雅俊(なかむら・まさとし)1951年(昭26)2月1日、宮城県女川

町生まれ。73年慶大在学中文学座付属演劇研究所入所。74年4月の日テレの連ドラ「われら青春!」で主演に抜てきされデビュー。同7月に挿入歌「ふれあい」で歌手デビュー、120万枚超の大ヒット。75年同局「俺たちの勲章」「俺たちの旅」、映画「ふれあい」。歌手としてシングル55枚、アルバム41枚をリリース。182センチ。血液型O

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◆「billboard classics 中村雅俊 Symphonic Live 2021~Before DAWN~」◆

▼8月28日午後5時 西宮・兵庫県立芸術文化センターKOBELCO大ホール 大阪交響楽団▼9月3日午後6時30分 名古屋・愛知県芸術劇場コンサートホール 大阪交響楽団▼9月26日午後5時 熊本・熊本城ホールメインホール 九州交響楽団▼9月30日午後6時30分 東京・Bunkamuraオーチャードホール 新日本フィルハーモニー交響楽団。いずれも指揮は円光寺雅彦、サポートミュージシャンは大塚修司。