「そんなの、プロだから当然じゃないですか」

もし、水原希子(30)に直接、問いかけたら、そう返ってくるかも知れない。でも、ロングのストレートヘアーで登壇したイベントの約24時間後に登壇した別のイベントで、髪を小分けにして毛束を三つ編みにした、ブレイズヘアにしていたのには驚いた。

水原は14日、LUXブランドリニューアル発表会に出席した。トレードマークの黒髪へのこだわりを聞かれると「あまりないですけど…でも今、髪をどこまで伸ばせるかという自分の中のギネスに挑戦しておりまして。ずっとボブを10年くらいやって、さすがに飽きて、自然に伸ばしていたら伸びてきて、自分の毛でどこまで伸びるのかなと…楽しみです」と答えた。髪を切る可能性については「何か、きっかけがないと切らないと思うので、腰までいったら、どうしようか考えようかな?」と語った。発表会はオンラインで同日正午から始まり、午後1時ごろに終了した。

水原は翌15日午後1時から、東京・渋谷でスタートしたマッチングアプリ「Tinder」のスペシャルトークイベントに登場した。登壇早々、水原の頭部に視線がくぎ付けになった。確かに切っていない…長さはキープしているが、前日の発表会からの、あまりの激変ぶりにシャッターを何度も切っていた。ブレイズヘアを編み込み、作り上げるには、専門媒体、メディアによると、髪が短い場合で2~3時間、長い場合は3~4時間以上、かかるという。日々、多忙であろう水原が、24時間以内に行われた2件のイベントの間に、それだけの時間をかけて髪形を変えるだけでも、労力がかかっているであろうことは想像に難くない。

双方のイベントともに、水原はブランドアンバサダーとして登壇している。LUXはヘアケアブランドであり、美しい黒髪を強調したのだろう。一方、Tinderでは、出演するオンラインCMで髪をピンクに染めるなど5つのシーンごとに髪形も衣装も変えて“5変化”しており、CMに則ってブレイズヘアにしたのかもしれない。モデルとして、イベントの趣旨に合わせて見せようという、プロの姿勢を感じた。

水原といえば、全裸にジャケットを羽織った姿などセクシーな写真をインスタグラムに投稿したり、ヌードに関する持論を展開したりなど、奔放な言動が芸能ニュースとして流れることが少なくない。ただ、イベントや舞台あいさつを何度か取材するたびに、特に仕事に関することについて、水原がプロとして高い意識、誇りを持って、自らの考えを自分の言葉で、はっきりと丁寧に伝えようとしていると感じる。

例えば、LUXブランドリニューアル発表会の中で、写真芸術が好きでモデルの仕事を始めたが、後に女優と芸能の仕事が来た際、悩んだと明かした。10代後半から20代の前半頃の時期に、ある写真家に相談し「モデル半分、芸能半分でやればいい。あまり出来る人はいないから好きなこと、チャレンジすることは、両方やっていい」と言われたといい「丁寧にやっていこうと今までやっています。将来が、はっきり見えた瞬間でうれしかった」と語った。

一方、Tinderのトークイベントでは、会場の4人とオンラインで参加した12人の大学生とトークした。話がコロナ禍に及ぶと「自分に与えられた命と時間があるから、ひとときも無駄にしたくない。自分の人生なんだと考えるようになった。今までは正直、あまりやりたくないけど次につながる…得るものがあるかもしれない。けれど、やりたくないということはあった。そういうのをやらなくなった」と仕事と人生への考え方が変わったと語った。その上で「やれば終わる、過ぎていくと、ないがしろにしていたけれど、プライベートでも仕事でも、自分の好きなこと、やりたいことって何だろうと、自分に問いかけるようになった」などと、大学生に向かって真剣に人生について語った。

これまで、水原を取材した中で忘れられないのが、2月15日に都内で行われた映画「あのこは貴族」(岨手由貴子監督)公開直前イベントだ。水原は劇中で、富山で猛勉強して名門大学に合格して上京したが、学費が続かず夜の街で働くも中退を余儀なくされた時岡美紀を演じた。門脇麦(29)が演じる、東京に生まれて箱入り娘として何不自由なく成長した榛原華子とは、対極にある役どころだ。

水原は「私自身も神戸出身。神戸と言ったら、ちょっと、お嬢さまのイメージがあるかも知れないんですけど、そっち側の神戸じゃないんで」と笑った。その上で「自分も東京に憧れを持って出てきて結構(役と)通じる部分があって、気持ちがリンクする瞬間があった。これだけリラックスして、お芝居したことはないと思えるくらい、すてきな体験、役でした」とほれ込んだことを強調した。

そして「私にとっても大好きな映画。自分の映画って『見に来て欲しい』って言うのは恥ずかしいんですけど本当に、たくさんの人に見ていただいて温かい気持ちになっていただきたいと思える作品」と、作品への強い思いが口からあふれた。その言葉通り、水原の演技は、自身と役柄が同一化したようにも感じられるほど、生々しく力強く、モデルとしてキャリアをはじめ女優業に挑む際、ためらったとは思えないものだった。

水原を取材するたびに、インパクトのある奔放な言動に注目するあまり、自分の思いを明確に、深く語る水原の言葉を伝え損なうことがないよう、可能な限り発信したいと思う。今後も、水原を取材する機会があれば、語る言葉の1つ、1つに耳を傾けていきたい。【村上幸将】