昨年3月に70歳で亡くなった志村けんさんの生きざまを描く、来月放送のフジテレビ系ドラマ「志村けんとドリフの大爆笑物語」で、04年に72歳で亡くなったいかりや長介さんの役を俳優遠藤憲一(60)が演じることになった。先月末に山田裕貴(31)が、主役の志村さんを演じる事が発表されたのだが、その時から「いかりや長介は誰がやるの?」という声が寄せられた。

他は加藤茶(78)を勝地涼(35)、高木ブー(88)を加治将樹(33)、仲本工事(80)を松本岳(28)が演じる。

ザ・ドリフターズの結成は、1956年(昭31)。いかりやさんは、62年に加藤と同時期に加入している。64年にリーダーとなって、その後に高木、仲本、74年に志村さんと入れ替わりで脱退して00年(平成12)になくなった荒井注さん(享年71)が加入している。そして60年代から80年代にかけてTBS系「8時だョ!全員集合」やフジテレビ系「ドリフ大爆笑」で、日本中のお茶の間をわかせた。

志村さんはコメディアンになるためにいかりやさんの元を訪れ、高校卒業間際の68年にザ・ドリフターズの坊や(付き人)として携わる。つまり、いかりやさんにとって“後輩”である他のメンバーと違って、志村さんは“弟子”だったのだ。志村さんから見ても“先輩”である他のメンバーとちがい、いかりやさんは“師匠”だった。

それだけにいかりやさんと志村さんの関係性は愛憎交じった、濃いものがあった。後から加入してエースになった自分に気を使ってくれた加藤、高木、仲本の先輩と違い、スターになっても弟子扱いのいかりやさんに対しては、志村さんは反発も口にしている。

そして、発表されたのが遠藤のいかりや役。生真面目な芸能デスクは「いいところをついた」、いつもは超絶辛口の女性記者も、わざわざ「最高だよね」と言いに記者のところへやって来た。そして、みんなで「フジテレビをほめてやらなきゃね」と笑った。みんなが納得するキャスティングにドラマへの期待が高まった。

遠藤は「まさか自分がいかりや長介さんを演じるとは予想もしていなかったので、びっくりしました。こわもてというところと年齢的なところが起用理由でしょうか。当時、ご本人たちがアドリブでやっていたことを台本に起こして、それを自分たちが演じることはなかなかない難しい経験でした」と話している。

現在、フジテレビの「ラジエーションハウス2~放射線科の診断レポート~」(月曜午後9時)で、放射線科の技師長・小野寺俊夫を演じている遠藤だが、今年6月に還暦、60歳を迎えてますます円熟味を増している。

若い時は脇役として、ギラギラとした個性派として存在感を示していたが、50歳を過ぎてから超売れっ子になった。スターの座に甘んじることなく、主役でも脇役でも富豪や会社役員、総理大臣を演じる一方で、変わらずに泥棒、死刑囚、さらには“妖精さん”や“お局OL”まで演じている。

9月にインタビューした際に遠藤は「いろいろなものをやれるようになったのは楽しいですね。いろいろとやるきっかけを作ってもらって役柄が増えて、いろいろなオファーが来るようになったのはありがたいですね」と話していた。

遠藤の演じる“長さん”が待ち遠しくて仕方ない。どんな「うぃーっす」を見せてくれるか楽しみだ。【小谷野俊哉】