黒柳徹子が絶賛したのも納得の、満島ひかり(36)の演技だった。年明けから公開&配信された「サンダーバード55/GOGO」(スティーブン・ラリビエー監督)で、満島は黒柳が66年にNHKで放送された「サンダーバード」で演じたペネロープ役を”2代目”として引き継ぎ、演じた。

ペネロープは、モデルもこなす貴族の娘の元スパイという役どころだ。満島は1月6日に都内で行われたイベントで「監督から『受け継ぎたい気持ちは分かるけど、あなたので…大丈夫』と言われた。監督が、大丈夫と言うならやってみようと」と、黒柳の演技を踏まえる以上に、自らの色を出すよう演出を受けたと明かした。

イベントには、黒柳がビデオレターを寄せ「とっても良かったです。私より落ち着いていて」と満島の演技を絶賛した。その上で、16年のNHKドラマ「トットてれび」で、満島が自らを演じたことを踏まえ「楽しそうなことが好きな女優さん。前(ドラマで)私のタマネギ頭をまねしたところもそっくり。面白がり。あなたが、ずっとやられていくんでしょう? うれしい」と太鼓判を押した。

「サンダーバード55/GOGO」を見れば、満島が黒柳の演技を参考にしつつも、自身の色を出そうとしたことが分かる。満島は「サンダーバード」でペネロープを演じた黒柳の演技を「トットてれび」に主演する際に資料映像で見たといい「お嬢さまらしさ、身勝手さ、人の話の聞かなさ」と評した。

ペネロープがあれこれ仕事を言いつけることに、時に愚痴を言いつつも全力で、かつ抜け目なく応じる執事パーカーとの掛け合いも「サンダーバード」の見どころの1つだ。初代ペネロープは、黒柳の独特の声色も相まってか、やや押しが強めのキャラクターだった。一方、満島が演じた2代目ペネロープは、初代より声色が甘く、ピンチに陥った際は、ある種の弱さも見せ、より女性としての魅力と幅が増した感がある。

ペネロープとパーカーとの掛け合いのリズム感は、初代を見ているかと思うほど近いものを感じた。満島はアフレコの際、パーカーを演じた声優井上和彦の収録に顔を出し「最初の何分かは一緒に練習させていただいた」という。トップ声優から技術を学んだだけでなく、掛け合いの呼吸感も、つかみにいったのではないか?

声優の経験が少ないと語る満島だが、15年の日本テレビ系ドラマ「ど根性ガエル」でCGで描かれたカエルのピョン吉を演じている。翌16年のアニメ映画「ONE PIECE FILM GOLD」では、謎の歌姫カリーナ役でアニメの声優に初挑戦。実写ドラマでCGで描かれたキャラクターを演じ、アニメ、そして人形劇と、声優として確実に幅を広げていると言っても過言ではないだろう。

その一助になっていると黒柳が指摘する「面白がり」の一面を垣間見たことがある。16年7月にUAEの首都アブダビで行われた「ONE PIECE FILM GOLD」のプレミア上映会に同行取材したが、満島は舞台あいさつ後、中東のファンの反応がどういうものか知りたいと、夜も遅いのに壇上から客席に降りて映画を鑑賞した。

帰国の途につこうとホテルから空港に移動するバスの車内で、窓の外の景色を眺めていると、同じように窓の外を見ていた満島と目が合った。どちらからともなく会話を始めると、その流れで映画業界談議となり、記者として何を思って取材しているか、などを尋ねられた覚えがある。

アブダビでの同行取材から5年半がたった。30代半ばになった満島の表情も「サンダーバード55/GOGO」で披露した声優としての演技も、より豊かになったと感じた。いつの日か、また機会があれば、バスの前後の座席でかわしたような、肩肘張らない映画談議を満島としてみたいものだ。     【村上幸将】