吉田鋼太郎(63)が20日、東京国際フォーラム ホールCで、ミュージカル初演出作品となる「ブラッド・ブラザーズ」(21日~4月3日まで)取材会を行った。

吉田にとって初のミュージカル演出で、出演せずに演出に徹する作品も初となった。吉田は「初めてづくし。仕事を楽しいと言ったら不謹慎かも知れないけれど、ミュージカルの演出は楽しいです」と稽古の充実をうかがわせた。役者陣の奮闘にも賛辞を贈り「自分が演出家ということを忘れる瞬間が多くて、ほぼお客さんとなって通し稽古を見ていた」と振り返った。

片方は裕福な家庭に引き取られ、片方は貧しく生活する双子が、お互いの素性を知らないまま友情を育んでいく物語。今作では演出家として裏方に徹するが、「出演したくなったのでは?」との質問には「ミュージカルの俳優さんは訓練された人々。出る幕がないと分かった」と納得したという。

一方で、柿澤勇人(34)とダブル主演のウエンツ瑛士(36)は「絶対に出たいだろうなと感じていた」、柿澤も「僕の役を突然やり始めた。『柿澤見ていろ』と。やっぱりやりたいんだなと思った」と稽古場での吉田の気持ちを感じ取っていたと明かした。これに吉田は「役者がプレッシャーを感じるので、やってみせる演出はしないけど、最後の最後でやってしまった。世が世なら(柿澤演じる)ミッキーをやりたいです」と、素直に語って笑わせた。

18年から約1年半にわたるイギリス留学を経験したウエンツは「稽古場でもいじられて、『イギリス帰りの実力を』となる」と苦笑い。それでも吹っ切れたように「ぜひステージ上でイギリス感をご覧ください」とアピールすると、吉田も「素晴らしいですよ。イギリス感満載です」と乗っかって笑わせた。

数多くの蜷川幸雄作品に出演した吉田の演出ぶりについて、柿澤は「蜷川さんをほうふつとさせる感じがある。1000本ノックじゃないですけど、瞬発的に応えないとならないことろもあるし、昨日のOKが今日はOKじゃなくなるところは、蜷川さんに似てきた」。稽古では酸欠になるほど追い込まれるというが、「『いい芝居は決して楽じゃない』とポロッと言った。命を懸けて苦しい思いをやっとお客さんに届くのではとおっしゃっていたのが印象的でした」と語った。木南晴夏(36)も出席した。

愛知、福岡、大阪でも上演。