【ロサンゼルス(米国)28日(日本時間29日)=千歳香奈子通信員】第94回米アカデミー賞授賞式の最中に、妻を侮辱したとしてコメディアンのクリス・ロック(57)の顔に右手でビンタを張った米俳優ウィル・スミス(53)が一夜明け、自身のインスタグラムを通じて謝罪した。「全ての暴力は破壊的。昨晩の私のふるまいは許しがたいもの」とした上で「公に謝罪したい、クリス。私は一線を越えてしまった…間違っていた」と呼びかけた。

スミスは、脱毛症に苦しんで丸刈りにした妻ジェイダ・ピンケット・スミス(50)をネタにしたロックのジョークが「許容範囲を超え、感情的に反応してしまった」と説明。米国内では同情する声の一方で、仕事でジョークを言うロックに対し大人の対応をせず、暴力に訴えたのはまずいと批判も多い。また、主演男優賞の受賞スピーチで「愛情によってクレイジーな行動に出る」と自己正当化したこと、スピーチに参加者がスタンディングオベーションしたことへの批判も出ている。スミスは「愛と親切の世界に暴力の居場所はない」と自らを断罪した。

主催の映画芸術科学アカデミーは、スミスを非難し正式な調査を開始した。ただ、スミスのようなスターであっても簡単に登壇し、暴力に及んだことで「なぜ場内にセキュリティーがいなかったのか」と主催者への批判、議論も始まった。14年の授賞式では、式の最中に届いた宅配ピザを俳優同士で食べ合うなど時に自由な掛け合いも授賞式の魅力だが、1発のビンタが授賞式の運営そのものにも影響を与えかねない状況だ。