筋トレブームと言われてから久しい。フィットネスジムや、パーソナルトレーナーなる言葉も、一般的になってきた。そんな中、今年7月、「プロパーソナルトレーナーBODYMAKE検定」が実施される。さまざまな筋トレ情報が飛び交う中、体系的なボディーメークの知識をもつトレーナーの資格や免許がない現状に対し、同検定を立ち上げた。同検定を立ち上げた、バズーカ岡田こと岡田隆日体大教授に、検定の意義などを聞いた。【竹村章】

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近年、日本のトレーニング市場は右肩上がりだ。そのきっかけの1つが、芸能人がダイエットに挑戦したことで有名になったライザップ。トレーニングジム業界は激戦となり、その市場規模は5年前の7100億円から、25年には1兆5900億円にまで成長すると見込まれている。

それぞれのジムにはトレーナーがいるものの、資格や免許があるわけでもなく、指導方法にどこまでアカデミックな裏付けがあるのかどうか、不安の声も上がっている。

もっとも、米国にはNSCAというストレングストレーニングと、コンディショニングに関する国際的な教育団体があり、91年には日本法人が設立。資格認定を行っているという。ただ、岡田教授によるとそのレベルは高く、トップアスリートのコーチ向けだという。「教本も論文並みで難解です。トップ選手のパフォーマンス向上を意識した作りになっています」と、百科事典並みの厚さのテキストを取り出した。

岡田教授によると、ここ数年の日本のトレーニング市場では、一般人のトレーニングのニーズが増えているという。ライザップなどが大量のCMを出稿し、筋トレと食事制限で痩せられるというイメージが定着した。そしてそれに加えて昨今では筋肉で理想の体に近づけるボディーメークの需要が高いという。「痩せるだけではなく、ヒップアップをしたいのか、それとも、二の腕をスッキリさせたいのか。それらの、アカデミックな知識の裏付けがある指導方法がなかったのです。いわば、資格なしに街中で営業するマッサージ屋と同じです」。

そんな内外の声に押され、「本当に正しい体のボディーメークの知識がほしい」という周囲からの期待の高まりに応え、メディアにも顔が売れて、ボディーメーク界の第一人者の岡田教授が、教科書、テキストとともに資格検定「プロパーソナルトレーナーBODYMAKE検定」を立ち上げた。

今年7月には3級と2級の試験が行われ、来年には、準1級と1級も設定される。解剖学や栄養学、ボディーメーク学の理論や実技、柔軟性の科学などを総合的に学べるプログラムとなっている。

岡田教授 健康的に体を変えたいという人は多いのですが、指導者側の知識が足りないと困るのはユーザーです。この検定が広まり、知識をもった人が増えれば、ボディーメークをきっかけに日本人の健康寿命が延びると思っています。現在は、中年の肥満、高齢者の体力低下が問題で、そのためには、家庭で正しい筋トレを行うのも大切で、そうした方々を支えたいご家族にも取っていただきたい。元気な中年や高齢者が増えれば、医療費も介護費も少なくなり、介護の諸問題も減っていきます。個人的には、医療費控除のように、筋トレの推奨を国がバックアップしていただければと考えます。

また、このような資格認定は、アスリートのセカンドキャリアにも役立つ。例えば、柔道の選手などは、武道が必修のため教職への道や警察など、就職先の選択も多いという。ところが、マイナースポーツだと、大学を卒業すると競技の継続が難しいという。

岡田教授 私は水球の日本代表のトレーナーをしていたのですが、大学を卒業すると受け皿が少なく、日本代表を継続するのが難しい。でも、アスリートの知見はあり、五輪選手としての経験や感覚を伝えることができる。この検定が認知され、スポーツ選手がこの資格を取り、国家資格である柔道整復師のようにセカンドキャリアを後押しできればとも考えています。

◆岡田隆(おかだ・たかし)、1980年(昭55)1月6日、愛知県出身。都立西高から日体大大学院体育科学研究科修了。今年4月から日体大教授。自らもボディビル競技に挑みつつ、骨格筋評論家、バズーカ岡田としてフジテレビ系「ホンマでっか!?TV」のほか、CMや雑誌などでも活躍。著書も多数で累計100万部を突破している。日本オリンピック委員会強化スタッフ(柔道)や、柔道全日本男子チーム体力強化部門長などで東京五輪でも全日本チームを支えた。YouTubeチャンネル「バズーカ岡田の筋肉ラボ」の登録者は約25万人。