戦後間もない1950年代、各局競って制作し、「君の名は」など放送史に残る名作、傑作も生まれたラジオドラマ。今や忘れられた存在だが、レギュラーや特番で放送を続けているのが、TOKYO FMだ。中には17年も続く人気番組もあるという。なぜ今、ラジオドラマなのか。ラジオドラマは復活するのか。
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TOKYO FM(TFM)は「安部礼司」のほかにも特別番組でラジオドラマを年3、4本のペースでコンスタントに制作している。NHKを除く地上波では、ラジオドラマがほぼ姿を消す中、異例の編成だ。
同局の内藤博志・編成制作局長は「ドラマ制作に、特に力を入れているということではありません」とした上で「放送で伝えたいことを表現するために最適だと考えれば、ドラマという手法を選ぶ、ということです、例えば報道特番で、現場の臨場感や空気感、人間の感情を重層的に表現するためにドラマが有効な場合がある。取材した事実や専門家のコメントにドラマパートを加えることで、伝えたいことがより伝わりやすくなります」と話す。
内藤局長によると、ドラマ制作は、脚本家や声優のブッキングなど、トークと音楽で構成する番組に比べて、制作費、制作日数は何倍にものぼる。何より、音だけで場面を設定し、状況を描写する演出の技術や知識、経験といったノウハウが必要だ。TFMには、ドラマ制作にたけたベテランが在籍しており、ノウハウが若手に蓄積、継承され、制作体制を維持できているから可能だという。
20年には、リリー・フランキー脚本、伊藤沙莉ら出演の「『東京』2021春 サヤカとトモヤ~君の牛、再び~」、21年は國村隼主演の「銀座の神様~小林亜星との日々」など話題作を世に問うている。
ドラマ作りのノウハウという「カード」は、配信にも生かされている。昨年は、ビジネスホテルと組んで、ホテルの客室内で聴けるドラマを制作。TFMが運営する音声コンテンツプラットフォーム「AuDee(オーディー)」で配信した。全編広告的なドラマ仕立てのコンテンツは、制作費は高いが訴求力も強いため、スポンサー企業からの引き合いも多いという。
内藤局長は「ラジオドラマ制作は、誰でも簡単にできるものではないが、設定や状況を自由に作れて、リスナーの想像力を喚起し、感情を動かすことができる。原始的なようですが、とてもおもしろい手法だ。有効に使っていきたい」と話している。



