TBS系報道番組「Nスタ」(月~金曜午後3時49分)MCやTBSラジオ「井上貴博 土曜日の『あ』」(土曜午後1時)で知られる同局の井上貴博アナウンサー(37)を取材した。

ラジオがスタートした今春、多くのメディアで取り上げられ、「日本一の司会者を目指す」「テレビが嫌い」「テレビを変えたい」「局アナなめんじゃねえ」など印象的なフレーズが目を引く。「Nスタ」でみせる冷静でクールなイメージとは異なる熱い一面が、魅力として幅広い層に浸透してきた。

個人的に「局アナがテレビ嫌い?」という疑問がずっとあった。よく「好きの反対は嫌いではなく無関心」などと言われるが、テレビに興味がなければ、そもそも就職活動の時点で目指さないのではないか。井上アナにその疑問をぶつけると「興味はめちゃめちゃあるんじゃないですか? 最初はアピールで(テレビが嫌いと)言っていたんですけど、そこは本質ではなくて。ぼくは多分どの業界に行っても同じ働き方をしていると思います」。

自身を「あまのじゃく」と表す。「何の仕事やっていても同じだと思います。『この仕事嫌いでーす』って言っていると思います。不動産だったら『不動産嫌い』って言っていると思います。それがたまたまテレビだったので『テレビ嫌いです』って言っている。まあ本心ですけど」。

本質はどこにあるのか。「ご時世的にもコロナ禍で今までの価値観を全部否定されているのに、変えたくないっていうのは、意味がわからなくて。どの業種、どの業界、どんな人も変わるべきだと思うんですよね。変えるんだったら1秒でも早いほうがよくて。それは失敗でもよくて。みんな変えてきているわけで。だったら変えたい」。興味があるからこそ、古い体質が残る業界を変えたいという強い信念があった。

「Nスタ」でもテレビを変えるため、制作陣と闘うべきという思いで臨んでいる。「制作側となれ合いで作るべきじゃないし、『No』は『No』って言うべき。『No』と言わないと変えられない。変えるためには『No』というしかない。そこは強く持っています」。

局アナは自分の意見を言うべきじゃないという声もいまだにあるが、コロナ禍で吹っ切れたという。「ニュース番組で、原稿を勝手に変えて読むとか、出されたものを読まないとか、普通あり得ないので。怒られることもありますけど、自分が名前と顔をさらしてやっているからには、覚悟を持ってやっているつもりですし、そこで失言があったら、いつでもやめますっていう。他の会社では絶対許されないですし、それを許してくれるTBSってまあ変わった会社だなって思います。今は感謝です」。【佐藤成】