300万円で製作されたインディーズ映画ながら、興行収入31億円超と日本映画史に残るヒットを記録した、18年の映画「カメラを止めるな!」が公開された23日に“聖地”都内の池袋シネマ・ロサで記念舞台あいさつが行われた。この日は、カンヌ映画祭でオープニング上映された「カメ止め」をリメークしたフランス映画「キャメラを止めるな!」(英題『Final Cut』、ミシェル・アザナヴィシウス監督、7月15日公開)が上映され、両作のコラボイベントとなった。

オリジナル版とフランス版の両作に、同じ笹原芳子役で唯一、出演を果たした竹原芳子(62)は「応援していただいたおかげで、「カメラを止めるな!」がフランスに行って、むちゃ振りしてきました」と、客席に感謝の言葉を口にした。上田慎一郎監督(38)から「『アツアツ』は、ねじ込んだんでしょ?」と、自身の決めぜりふをフランス版でも口にした件について突っ込まれると「台本に別な言葉を書いていた。これは、入れなきゃいかんと思って…」と胸を張った。

「カメラを止めるな!」は、新人監督と俳優を養成する「ENBUゼミナール」の映画企画第7弾として、上田監督が17年4月にオーディションでメインキャスト12人の俳優を選びワークショップを開催。同11月に東京・新宿K'sシネマで6日間、行った6回限定のイベント上映で評判を呼び、18年6月23日に同劇場と池袋シネマ・ロサで封切られた。その後は、上田監督と俳優陣が連日、舞台あいさつを続け、作り手と観客がSNSによる口コミで映画を広げ、全国375館にまで拡大公開された。

物語は、山奥の廃虚を舞台に、37分間ワンシーン・ワンカットでゾンビサバイバル映画を撮影する、自主映画撮影隊を描いた。監督が本物の映画作りを追求するあまり、テイクが42にも及ぶうちに、撮影隊に本物のゾンビが襲いかかる中、大喜びで撮影を続ける監督と次々、ゾンビ化していく撮影隊の面々を描いた。

ゾンビ映画の恐怖感はもちろん、監督、俳優陣をはじめとした製作陣の狂気とも言える奮闘ぶりを、企画の立ち上げから撮影現場の裏側まで生々しく、克明に紹介。その上で、ノンストップな展開と、物語が途中で大どんでん返しを迎えるまで、他に類を見ない緻密な構造で作り出された脚本の妙が、専門家筋や業界で話題となった。19年の第42回日本アカデミー賞では、8部門で優秀賞を受賞し、うち上田監督が最優秀編集賞を受賞し、話題賞の作品部門も受賞した。

さらに19年3月2日にはABEMAでスピンオフドラマ「カメラを止めるな! スピンオフ ハリウッド大作戦!」が放送された。「カメ止め」でゾンビサバイバル映画を作った半年後に″ハリウッド版・ノンストップ・ゾンビサバイバル″を撮った撮影隊を描き、主人公が濱津隆之が演じた日暮隆之から、真魚が演じた隆之の娘真央に変わった。上田監督は総監督と脚本を務め、監督は「カメ止め」で助監督を務めた中泉裕矢氏が務めた。

同3月7日には、公開初日から上映し続けてきた、池袋シネマ・ロサでの上映が258日で最終日を迎えた。翌8日に日本テレビ系「金曜ロードSHOW!」で、テレビ初放送、しかも放送枠を10分拡大しての完全ノーカットで放送された。

新型コロナウイルスの感染が拡大した20年5月には、YouTubeで短編映画「カメラを止めるな! リモート大作戦!」を公開。上田監督をはじめとした製作陣と各俳優は1度も会わない。その代わりに、上田監督がビデオ通話の画面や俳優がスマートフォンで自撮りを行った画像を受け取って、編集を行う“完全リモート映画”として製作した。

この日は、他に濱津隆之(40=日暮隆之役)真魚(30=日暮真央役)しゅはまはるみ(47=日暮晴美役)長屋和彰(34=神谷和明役)細井学(63=細田学役)市原洋(36=山ノ内洋役)秋山ゆずき(29=松本逢花役)も登壇した。