シンガー・ソングライターのChara(54)が、阿部寛(58)主演のDisney+(ディズニープラス)内の新ブランド「スター」の日本発オリジナルドラマシリーズ「すべて忘れてしまうから」に出演することが19日、分かった。演技をするのは、1996年(平8)の映画「スワロウテイル」以来26年ぶりで、ドラマへの出演は初めて。オファーを受けた理由について「音楽絡みの役柄だったのと、私にやって欲しいという熱意が伝わったからです。新しいことをやるのは、とても楽しいからね」と語った。

Charaは劇中で、阿部が演じるミステリー作家“M”が通う行きつけのバー「灯台」のオーナー・カオルを演じる。「灯台」は、Mが5年付き合ったものの、ハロウィーンの夜に、ささいなことでケンカした恋人“F”が消えた、物語のキーとなる舞台だ。演じるカオルと自身が似ているところを聞かれると、「Charaに寄せてくれたんでしょうか? 女性でシングルマザーで息子もいるところと音楽を愛しているところかしら? カオルさんの方が謎めいてるかな」と語った。

撮影にあたり、準備したことを聞かれると「カオルさんが、ギターの弾き語りで演奏するシーンの曲が、なかなか決まらず…。この曲になるかも? という曲を、何となくギターの練習していたけど、その曲じゃなくなりましたね。(撮影)2日前の夜に決まって、やばい! ってなりました」と笑いながら明かした。その上で「最後の演奏シーンも(曲が)前日に決まり、演技とかじゃなくて、メンバーを集める方にパワー使ってたかも」と笑いながら明かした。その上で、親友で女優の伊藤歩(40)が「私の久しぶりの女優仕事を心配してくれて家に遊びがてら、本読みしに遊びに来てくれたんです」とサポートしてくれたことを明かした。その上で「歩、愛してるよ」と感謝した。

ドラマについては「独特のドラマスタイル。原作から、気になっている人も、役者さんから気になる人も楽しめるといいな」と評した。その上で初共演の阿部について「格好よかったです。声とか低くて、すてきでした」と、現場で初めて会った際の印象を明かした。

制作陣はオファーの理由について「『スワロウテイル』での圧倒的な存在感は、多くの邦画ファンの脳裏に鮮烈な記憶として刻まれています。その元来のカリスマ性が、本作の持つ誰の記憶にもつながるような日常ドラマを、特別な味わいに仕立ててくれるものと確信して、監督たちの満場一致を受けてご出演を依頼しました」と経緯を語った。

また宮藤官九郎(52)も、灯台の料理人フクオ役で出演する。阿部との共演は、07年の映画「大帝の剣」以来15年ぶりで「うれしかったです。俳優として連続ドラマに出るのも久しぶりですし、阿部さんとも15年ぶりの共演だし。監督陣はじめスタッフも若く才能あふれれる方々だし、何しろ衣装がいちいちオシャレで、着て帰りたいくらいでした」と語った。阿部との15年ぶりの共演については「広島の山の中で1カ月くらい、終わらないんじゃないかという過酷な撮影をともにして以来でしたが、いい声でボソっと、くだらないことを仰るところは、まるで変わってなくて、懐かしかったです」と前回の共演を振り返りつつ、語った。

演じるフクオについては「なんか、いいかげんに生きているように見えて、自分の半径数メートルの世界を大事にしているんだろうなと。20代半ばまで深夜営業の居酒屋でバーテンダーのようなことをしていたので、自分でも驚くほど自然に溶け込むことが出来ました」と、役作りに自身の経験が役に立ったと振り返った。その上で「阿部さんの役は、すごく情けなくて、関係性も、ちょっとだけ僕の方が優位だったのが、新鮮でした」と評した。

また、作品について「無理に感情を誘導せず、強引に盛り上げたり、泣かせようとしたりせず、それでも、大人の子供っぽさとか、若者の達観とか、生きにくい社会とか、現代を切り取っている、珍しいドラマだと思います。その中で、珍しくオシャレな服を着て、珍しく良いこと言ったり言わなかったりしている僕を見てください」と評した。

制作陣は「人間・宮藤官九郎には格別な色気が漂っています。それは人生において、さまざまな事象を深く見つめ、触れてきたからこそ醸し出されるものだと思いますし、そんな宮藤さんだからこそ、つかみどころのないフクオという役柄に実在感を持たせることができると思いました」とオファー理由を明かした。

「すべて忘れてしまうから」は人気作家・燃え殻氏の同名エッセーを岨手由貴子、沖田修一の両監督、米アカデミー賞で国際長編映画賞、カンヌ映画祭で邦画初の脚本賞を受賞した「ドライブ・マイ・カー」で濱口竜介監督と共同脚本を担当した、大江崇允氏がドラマ化する。

阿部は、1987年(昭62)の俳優デビューから35年で、配信ドラマへの出演は初めて。演じるMは、現実から逃げたくて書いた小説が、たまたま小さな出版社の目に留まり、大した賞も大ヒット作もないまま小説を描き続けているという地味で主体性がない作家、という役どころだ。19年のフジテレビ系ドラマ「まだ結婚できない男」以来のラブストーリーで「久しぶりに日常を描く作品をやらせていただくので、自分の中で、今の年だからこそ、日常の何げなさからくる新たな発見みたいものが、どのくらいできるのかなという自分の内面に新たに挑戦する作品になるかなと思っています」と意気込んだ。

「すべて忘れてしまうから」の配信は9月を予定している。