「何だ、師匠の命日じゃねぇか。ようし、やろう」。円楽師匠のひと言で、「にっかん飛切落語会第358夜」(東京・内幸町「イイノホール」)の17カ月ぶりの開催が決まった。暮れも押し詰まった2015年(平27)12月27日、東京・浅草「東洋館」の楽屋に向かった。出待ちの間に、開催への協力と出演依頼をした時だった。

「出演者も含めて準備もあるだろうから、来年の秋ぐらいかな。10月29日なら空いているぞ」。手帳を出して日程を決めた。

「じゃあ、その日でお願いいたします」。どんな日か気付いた上で、頭を下げた後だった。「星の王子さま」こと先代の5代目円楽師匠の命日だと、師匠から口に出してきた。

この落語会、若手の育成のためにと先代円楽師匠が74年に始めた。記念すべき第1回の開口一番は、当時前座で「三遊亭楽太郎」と名乗っていた円楽師匠だった。以来この落語会に触れると、「師匠が手掛け、お客さまとともに育て上げてくれた思い入れのある落語会なんです。たぶん、私が1番出してもらったんじゃないですか」が話した。

当日の出演者は順に桂宮治、柳家花緑、神田松之丞(現伯山)、トリは円楽師匠。ほぼ満席となり、会場は笑いに包まれた。

楽屋から舞台へと向かうエレベータホールに、先代の写真も飾らせてもらった。高座に上がる前に「師匠、行ってまいります」、終えた後は「ありがとうございました」と手を合わせていたのを覚えている。

「気遣ってくれてありがとう。師匠のおかげかな。いい会だったね」。落語会がハネた後のねぎらいの言葉は、今も忘れられない。【赤塚辰浩】