ロックシーンの最先端を駆け抜けた日本人ギタリストの素顔に迫ったドキュメンタリー映画「KUNI 語り継がれるマスク伝説~謎の日本人ギタリストの半生~」が18日、東京・ヒューマントラストシネマ渋谷で公開され、多くのロックファンが駆けつけた。

KUNIは80年代に単身で渡米。プロのミュージシャンとしての道を切り開いてきた。現在はTBSで不動産部門に携わる佐藤功一氏(60)が初監督した異色作品。今後、大阪、名古屋などで順次開催される。

同作は「TBSドキュメンタリー映画祭2023」の出品作品。佐藤監督は「誘いを受け、勢いで企画を提案したところ通過してしまった」と笑顔で語る。それでも、作品については熱く勝った。

「中学生の頃からハードロックファンだったのですが、中でもKUNIが一推しでした。彼はLAメタルの本場だったアメリカで成功を収めた人物で、86年にアルバム『Masque』を発表して以来、これまで4枚のアルバムをリリースしてきました。当然、僕は、その全てを聴いてきました。その彼と昨年、久しぶりに再会した時、実は闘病生活だと聞かされたのです。彼はアメリカで成功したとは言っても、そのことを日本で知る人は実に少ない。だったら、今こそ、彼の実績を映画を通じて紹介したいと思ったのです。私も60歳を迎え『今しかできないことをやろう』『自分にしかできないことをやろう』との思いで彼の半生を描いてみたいと思った」。

約半年かけてKUNI本人をはじめ、関係者、海外ミュージシャンらをインタビュー。KUNIが歩んできた人生、駆け抜けてきた時代背景、そして、ポジティブで多くの人に愛される「KUNIの人柄」を撮り続けた。

インタビューに応じているのは、ロックバンドKISSのドラマー、エリック・シンガーや、ベーシストでロックバンドMR.BIGのビリー・シーン、米ロックミュージシャンのジェフ・スコット・ソート、ロックバンド、クワイエット・ライオットのベーシストとしても知られるチャック・ライト、ロックバンド、ストーターのマーク・スローターとディナ・ストラムら、ステージやレコーディングなどで親交のあった海外ミュージシャンなど多岐にわたる。

また、日本でデビューをサポートした音楽評論家の伊藤政則氏や当時、渡辺音楽出版に所属し、現在はヒップランドミュージックコーポレーションで顧問を務める田島敏氏、さらに、ロサンゼルスでKUNIに住居を紹介した友人、アルコール依存症となった彼を治療を続けた医者ら、陰でバックアップしてきた関係者も全面的に協力している。

佐藤監督は「絶対にプロになってみせるという信念のもと、アメリカに渡り、彼は仮面をかぶってLAのミュージックシーンのど真ん中に飛び込み、ギタリストとしての地位を築き上げました。その後、日本でも音楽プロデューサーとして活躍していますが、ギターは封印した。なぜ、ギターを封印したのかも含め、ロックシーンの最先端を駆け抜けた彼の謎に迫ります。立場は違いますがWBCで日本人選手が世界から注目される中でタイミング的にも良かった」意欲を見せる。

今作は、ヒューマントラストシネマ渋谷のほか、24日からは大阪のシネ・リーブル梅田、名古屋の伏見ミリオン座でも公開される

佐藤監督は98年にTBSに入社。主に営業職として勤務し、BS-TBSコンテンツ編集局エグゼクティブ局長に。現在はTBSホールディングスのリアルティ戦略局不動産マネジメント部に所属。

KUNIはギターが生み出す音色の深みを完璧なまでに追求し続け、83年に単身渡米。L.A.メタルのムーブメントの中、LAので孤軍奮闘していた日本人ギタリスト。メタルムーブメントを知る人物と言われている。天性のポジティヴな人柄もあり、現地ミュージシャンを従え、1986年アルバム『Masque』を発表するなど、世界中のへヴィメタルシーンにアメリカから一石を投じた。