先日、米ニューヨークでマイケル・J・フォックス(61)の新作ドキュメンタリー映画「STILL マイケル・J・フォックス ストーリー」の特別上映会が行われた。

作品は人気絶頂期にパーキンソン病を患いながら、今も闘病を続けるフォックスの半生を描いた作品だが、この上映会で注目されたのが、友人として出席した女優のメグ・ライアン(61)だった。

フォックス夫人の女優トレイシー・ポラン(62)が、自身と夫、それにライアンのスリーショットをインスタグラムで公開すると、ライアンについて「誰だか分からなかった」と、外見の変化に驚くコメントが相次いだのだ。

「ロマンチック・コメディーの女王」のイメージが強かった彼女は、ここ数年公の場から遠ざかっていたから、その変貌ぶりに驚きの声が上がるのも無理はない。が、年齢を考えれば相応の変化と言えるだろうし、リラックスした笑顔のプライベートショット公開に、何事も隠し立てしない彼女らしさを感じた。

35年前の夏、26歳だったライアンの開けっ広げな行動に好感を持ったことを覚えている。

映画「プレシディオの男たち」のPRでの来日で、彼女はショーン・コネリーふんする厳格な憲兵隊長の娘を演じていた。前々年の「トップガン」への出演で顔を知られるようになり、トップ女優への足掛かりをつかんだ時期だった。

インタビューしたのは宿泊先の東京・帝国ホテルの彼女の部屋だった。

話も弾みだした中盤。「自分の魅力はどの辺にあると思いますか?」と尋ねると、「それは彼に聞くのが一番ね」と、突然立ち上がって続き部屋の扉を開け、すすっと中に入ると、そこで息を潜めていた人物に話しかけたのだ。

「どう思う」

「オレはプライベートで来ているんだから、コメントはしたくないよ」

扉越しにおおむねそんなやりとりが聞き取れた。

声の主はこの前年に映画「インナースペース」で共演。この取材の3年後に結婚(01年に離婚)したデニス・クエイド(当時34歳)だった。クエイドは「プレシディオ-」とはまったく無関係で、ライアンはPR来日にちゃっかり恋人を同伴していたことになる。

続き部屋から戻ると、照れ隠しのように笑い「彼、照れちゃってダメね。自分では(チャームポイントが)分からないから歯茎ってことにしておいて。あなたの前に取材した記者さんがほめてくれたから」と口角を上げてソコを見せてくれた。確かにピンク色のきれいな歯茎だった。

当時のハリウッド女優は自己PRをはっきりと言葉にする人がほとんどだったから、このコメントも新鮮だった。

この時の記事を読み返してみると「この前は参っちゃったわよ。デニスと2人でスーパーで買い物をしていたら、近くにいた中年女性の2人連れがこっちを見ながら『ほらほらゴールディー・ホーンとケン・ラッセルが買い物をしているわ』ですって。まあ、似ているかもしれないけれど、私たちって知名度がもうひとつなのよね」なんてことも言っていた。

今回の「驚き」の一因には、「トップガン マーヴェリック」に挿入された37年前のアーカイブ映像で、弾けるような笑顔を披露したばかり、というタイミングもあったように思う。

いろいろ言われたインスタグラムの写真にしても、帝国ホテルで接した若きメグ・ライアンを思い出させるくらいチャーミングだったことは間違いない。【相原斎】