第76回カンヌ映画祭授賞式が27日(日本時間28日)フランスで行われ「PERFECT DAYS」(ヴィム・ヴェンダース監督、日本公開未定)主演の役所広司(67)が、日本人俳優として04年の柳楽優弥(33)以来19年ぶり2人目の男優賞を受賞した。

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役所と接する度に、日本を代表する俳優ながら腰が低く、言葉の端々からも俳優以前に一市民としての目線を失わない人だと感じる。昨年の「峠 最後のサムライ」の舞台あいさつで、永山絢斗が撮影中、スーパーマーケット大手のイオンでバッタリ会ったと明かすと「僕は多分、部屋で食べる酒のつまみかな」と明かした。東洋水産の即席麺「マルちゃん正麺」のCMには11年11月の発売当時から出演しているが、10周年を迎えた21年のイベントでも“スーパー談議”を展開。「即席麺コーナーに行くと、横目でチラッと…売れてるかなぁと思って必ず通過して見る」と明かした。

10年に米ハリウッドのワーナースタジオで行った主演映画「最後の忠臣蔵」の試写に同行取材した際も、夜の会食で気さくに会話に応じてくれた。妻との記念写真のカメラマンも記者が務めた。会えば「いつも、たくさん書いてくださって」と丁寧に感謝される。一方で、17年12月にTBS系ドラマ「陸王」のクランクアップを取材した際、撮影に熱が入り肉薄し過ぎ、若干、視界に入ったのか「近すぎる」と一喝された。

失わない庶民目線の一方で、妥協のない役作りと演技…。世界3大映画祭初の主演男優賞を受賞した役どころが東京・渋谷のトイレの清掃員…受賞の瞬間、つくづく、らしいと思った。【村上幸将】