都内の4つの劇場で歌舞伎公演が相次いで初日を迎えた。2日に歌舞伎座、浅草公会堂が、3日に新橋演舞場で開幕し、5日には、再開発のため閉場中の国立劇場主催公演が新国立劇場で開幕した。

国立劇場の初芝居は例年、菊五郎劇団によるにぎやかで華やかさが見どころの演目。今年は、「通し狂言 鏡山旧錦絵(かがみやまこきょうのにしきえ)」で、お家転覆をたくらむお局を阻止しようとする女性たちの奮闘を描いた演目がかかった。物語の最初から最後までを見せる「通し」と呼ばれる上演形態は、ストーリーの理解度も深まる。

メインの登場人物3人が女性というのも珍しい。8代目尾上菊五郎が演じる召し使いお初は、けなげでかれんで、それでいて芯がしっかりしていて、剣術が強いという魅力的な人物。菊五郎の明朗な声とキビキビした動きで、魅力が一層際立っていた。

女主人を演じる中村時蔵とのコンビネーションも良く、主従それぞれの心情が丁寧に演じられていた。

敵役は坂東彌十郎。敵役がどれだけ憎らしいかで、より主人公に感情移入できる。彌十郎の憎らしさは満載だった。

昨年、8代目菊五郎が誕生し、7代目と8代目の菊五郎が並び立っている。今回の舞台で、7カ月ぶりに7代目、8代目が共演しているのも見どころ。7代目の存在感と伸びやかな声は変わらず、物語をぐっと引き締めていた。

毎年の楽しみは、初芝居恒例の流行語が盛り込まれる場面。今年は、女性たちが活躍する物語にぴったりで、高市早苗首相の会見で話題になった「働いて働いて働いて働いて働いてまいります」が飛び出した。どの場面かは見てのお楽しみだ。

歌舞伎を見てみたいけど、何を選んでいいのやら、と思う人にはぴったりだなと思う国立劇場公演だった。物語も分かりやすく、ハッピーな気持ちになれる。【小林千穂】