メーキャップ・ヘアスタイリング賞にノミネートされた「国宝」(李相日監督)は、日本映画として初受賞を逃した。オスカーは「フランケンシュタイン」(ギレルモ・デル・トロ監督)が獲得した。

メーキャップ・ヘアスタイリング賞は、米映画「スマッシング・マシーン」(ベニー・サフディ監督、5月15日公開)で6度目のノミネートを果たした、米国籍を取得したカズ・ヒロ(辻一弘)氏が18、20年と2度、受賞してきた。ヘアメークの豊川京子氏、歌舞伎メークの日比野直美氏、床山の西松忠氏は、日本国籍を持つ日本人として初のオスカー受賞の可能性があったが、ならなかった。

「国宝」は作家・吉田修一氏(57)の同名小説の映画化作品。吉沢亮(32)が主人公・立花喜久雄の50年の人生を、少年期を演じた黒川想矢(16)と演じた。抗争で父を亡くした喜久雄を引き取る上方歌舞伎の名門の当主・花井半二郎を渡辺謙(66)半二郎の実の息子で、生まれながらに将来を約束された御曹司・大垣俊介を横浜流星(29)と、少年期を越山敬達(16)が演じた。吉沢と横浜が、歌舞伎俳優の中村鴈治郎(66)から1年半にわたって歌舞伎の指導を受けたことも話題を呼んだ。

25年6月6日の初日から同11月24日までの公開172日間で、興行収入(興収)173億7739万4500円、動員1231万1553人を記録。03年「踊る大捜査線 THE MOVIE2 レインボーブリッジを封鎖せよ!」(本広克行監督)が22年、守った173億5000万円の実写日本映画興収記録を22年ぶりに更新。今年2月15日までの公開255日間で、興収200億851万9000円。動員1425万2409人を記録。邦画実写史上初の興収200億円を突破した。

2月27日に都内の日本外国特派員協会で開いた会見で、李監督は「映画俳優を歌舞伎役者として作り上げる、最も重要な要素がメーキャップ。歌舞伎と50年という人生の時間を再現しないといけない。50年の半分、25年、仕事している京子さんにお願いすることにしました」と当初、映画業界においてヘアメークアーティストとして屈指の評価を誇る豊川氏に託そうと考えたと明かした。ただ、同氏から歌舞伎俳優が自ら行うメークを行うのは難しいと指摘されたと説明。「歌舞伎のメーキャップは、歌舞伎俳優ご自身がやるものですから、他の方がする難しさ。見込みが甘かった。恭子さんは最初からダメだと思っていた」と振り返り、クランクイン1週間前に日比野氏を含めチームを結成したと明かした。

豊川氏は「最初は歌舞伎のメークも全部やれと言われたけれど…別物だと思ったので。練習するうちに、役者に失礼だと思いました。にわか仕込みの我々がやるべきことではない。いろいろな方に相談する中で、思いが伝わらず…プロデューサーからひと言、顔師を入れないといけないと言っていただいた」と振り返った。

李監督は「見つかるのかと思って、見つかったのが日比野さんだった。宝が見つかったと喜んで、クランクイン1週間前に合流してもらいました。西松さんは、歌舞伎の桂を40年以上、やられているので技術と長い経験が、この作品のリアリティーを担保することに必要だったので、1から作ることで参加いただき、このチームができた」と笑みを浮かべた。