日本を代表するフォークグループ、アリスが81年に活動を休止して以来、28年ぶりの全国ツアーを行う。4日、クラシックの殿堂・東京文化会館で発表会を行った。谷村新司(60)堀内孝雄(59)矢沢透(60)が、“還暦ツアー”を決心するきっかけになった曲「明日への讃歌」を披露した。

 同曲は昨年3月、谷村のリクエストアルバム「音帰し(おんがえし)」のレコーディングで、3人が集まるきっかけを作ったメモリアルソング。そこで再始動を決意した谷村は「年齢的に今がぎりぎりかな。1人でも欠けたら『アリス』が『アリ』になっちゃう」と、ジョークで“最後のツアー”を示唆した。

 この日の3人は気合十分。堀内がリハーサルでは出なかった高音を響かせれば、谷村はギターの弦を2本も切る熱のこもった演奏で応えた。「ステージは魔物でぼくらの戦場。自然と声が出てしまう」。興奮気味の堀内は、すでに本気モード全開。谷村は四半世紀ぶりに全国を回ることに「ファンの元へ出向くのがアリスらしい。年齢を考えると、命を削るようなツアーになる」。笑顔ながら、全盛時代のロックに対抗して年間300本のライブをこなした闘争心を静かによみがえらせた。

 7月24日の北海道を皮切りに、11月4日まで全国35本の公演を行う。会見前日の3日には、都心の雪を見ながら3人で誓いの食事をしたという。81年11月の後楽園球場でのサヨナラコンサートの前日も雪だった。「活動の一時停止をしたあの時と、今回の再始動と一緒だねと話し合ったんです」(谷村)。年齢は重ねても、音楽に邪心のない3人の真っ白な思いは20代のままだ。

 [2009年3月5日8時51分

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