歌舞伎俳優中村勘三郎(56)が22日、鹿児島県三島村の硫黄島で歌舞伎「俊寛」を15年ぶりに行った。96年、俊寛の流刑伝説の島である硫黄島の砂浜で「俊寛」を演じ、前代未聞の野外歌舞伎として話題を呼んだ。その後も「もう1度再演を」との声があり、勘三郎も「また演じたい」と切望し実現した。

 当初は今年3月下旬の予定だったが、勘三郎の体調不良のため、この日に延期となった。再演にあたり、父18代目勘三郎が演じる「俊寛」の銅像も建立され、開演前には除幕式も行われた。

 砂浜に竹や松をあしらった総天然の舞台。大道具の船は村の漁師たちが操業する本物という演出に、東京や大阪から来島した観客たちは驚きを隠さなかった。「俊寛」のラスト。自らの代わりとなった島の娘を乗せた赦免船を見送る、勘三郎演じる俊寛が「おーい」と海まで走り出て、寄せる波で衣装をぬらしながら叫ぶ迫真の演技に大きな拍手が起こった。

 カーテンコールで勘三郎は「最初にこの硫黄島で俊寛を演じたのが15年前。その時は15歳の勘太郎が千鳥を務め、今回は鶴松です。チャンスがあれば15年後、自分は71歳になりますが、15歳になる孫の七緒八の千鳥と一緒にここで演じたい」と話した。