高視聴率で話題の日本テレビ系ドラマ「家政婦のミタ」(水曜午後10時)が明日21日、最終回を迎える。先月30日の第8話は今年の連続ドラマ最高の平均視聴率29・6%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)を記録。現在6週連続で20%超えを維持している。「ミタ」の生みの親、脚本家の遊川和彦氏(56)がとっておきの秘話を明かした。

 遊川氏は意外な楽屋裏から明かした。構想段階では「ミタ=松嶋菜々子」ではなかったという。

 遊川氏

 誰がやろうが、面白いキャラクターを作らなければいけない。「松嶋さんじゃなきゃダメだ」となったら、こちらの負けですから。

 今となっては、これ以上ないはまり役に見えるが、配役の決め手は何だったのか。

 遊川氏

 失礼かもしれないが、松嶋さんが本当に「役者」なのか、それとも1人の「スター」なのか確かめたかった。最初の台本読みリハーサルでイケるなと確信した。最終的には、彼女しかあり得なかった。

 松嶋の主演ドラマの脚本執筆は、99年のヒットドラマ「魔女の条件」以来。「ミタ」起用は、松嶋の魅力を知る脚本家だからこその発想だったようだ。

 「ミタ」の成功には、松嶋の「決断力」があったともいう。遊川氏は、ベストセラーの原作の脚本化ではなく、オリジナル作品にこだわってきたタイプ。話題になっている原作と比べ、企画が通りにくいのが、現実だ。

 遊川氏

 我々は(原作が売れているという)大企業のような作品に挑んでいく零細企業のようなもの。松嶋さんは、企画書だけで出演を決意してくれた。放送枠がいいからとか、(原作が売れている)勝ち馬に乗るという人も多い中、松嶋さんは違った。

 話は最近のドラマ制作に対する問題意識に及んだ。

 遊川氏

 みんなドラマでは“零細企業の熱意”を書くくせに、ドラマを作る現場は、やらない。それはおかしいじゃねえか。

 「家政婦」を題材にしたのはなぜなのか。

 遊川氏

 家にいる他人だからできること、言えることがあると思った。

 キャラクター像をめぐる攻防もあった。議論したのは主人公が家族たちに心を許し始める9話以降。

 遊川氏

 (松嶋に)カチンときたって言われた。僕は書いてるから話を知ってる。でも演じる側は「なぜ変わるの」と疑問を持つ。でも、いくら話しても無駄はない。コミュニケーションを取るのを面倒くさがってる時代ですから。

 脚本構想段階で「スター力」に頼らず、丹精込めてキャラクターを作り上げる。勝算が決して高いとはいえないものであっても、思いを受け取ってくれる女優に運命を託す。そして、キャラクターを挟んで、徹底的に議論を尽くす。遊川氏と松嶋のそうした関係がヒットを生み出す大きな要因だったようだ。【三須一紀】

 ◆遊川和彦(ゆかわ・かずひこ)1955年(昭30)10月24日、東京都生まれ。広島大卒。テレビ制作会社ディレクターを経て87年から脚本家に。同年TBS系「オヨビでない奴!」で連続ドラマデビュー。05年日本テレビ系「女王の教室」で第24回向田邦子賞を受賞。

 ◆「家政婦のミタ」

 三田灯(松嶋菜々子)は、頼まれた仕事を完璧に遂行するスーパー家政婦だが、笑顔を一切見せない。派遣先は母親を事故で失い、バラバラになった阿須田家。三田の行動で絆を取り戻していく阿須田家。やがて、三田が笑顔を失った理由は、夫、長男を義理の弟の放火により失ったことが最大の原因と判明。阿須田家は三田の笑顔を取り戻すために行動を起こす。