<第62回NHK紅白歌合戦>◇31日◇NHKホール

 東日本大震災の被災地から中継出演した長渕剛(55)が今年の全国ツアーで、旧盆の時期に東北各県を回るスケジュールを組んだことが31日、分かった。1年半ぶりとなるツアーは、5月にスタート。神奈川公演を皮切りに、19都道府県27公演を実施する。ツアーを締めくくる最終3公演は、福島(8月12日)、岩手(同13日)、宮城(同15日)に設定した。精霊を迎え供養をする時期に東北各県を回ることで、鎮魂の思いを伝えるつもりだ。

 長渕は紅白で、宮城・石巻市の門脇(かどのわき)小学校の校庭から中継出演した。同校は震災で、火のついた重油を抱えた津波に襲われ、火の海となった。児童は避難したが、教室には今も教材やカバン、靴などが散乱したままだった。

 長渕は歌唱前、被災を乗り越えようと懸命な子どもたちに呼びかけた。

 長渕

 この闇に立って目を閉じるとね、たくさんの子どもたちの顔が浮かんでくるんだよ。早くふるさとに帰りたいよなあ。こんなんじゃ、だめだな。ごめんな。でもね、僕は信じているんだ。日本の技術の力を総結集してさ、みんながふるさとに帰れる日が必ずや来るって。それまで俺たち大人たちも頑張るからさ。おまえらも一生懸命生きてくれよ。元気でいなくちゃだめだよ。分かった?

 漆黒の闇の中、108基の照明に映し出された長渕は、鎮魂と祈りを込めた「ひとつ」を歌った。光は最後、大きな柱のように上空に昇っていった。

 12月28日現在、同市内では3280人が死亡。629人が行方不明のままだ。【笹森文彦】