TBS系の大人気ドラマ「半沢直樹」(日曜午後9時)でおねえ言葉の金融庁エリート黒崎を演じる歌舞伎俳優片岡愛之助(41)が話題を呼んでいる。舞台を大阪から東京に移した第6話(25日)にも終盤、銀行に検査に入る主任検査官として登場。明日9月1日の第7話から主人公の半沢(堺雅人)と全面対決する。「こういう役をやりたかったので楽しい」という愛之助は、初体験のおねえキャラの役作りは女形の弟子をモデルにしたことも明かした。

 今月11日、25日と2回連続で29・0%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)の高視聴率をマークしたが、愛之助も反響の大きさに驚いている。

 「(市川)海老蔵さんの勧めもあってブログを始めたんですが、『黒崎、面白いです』とか『愛之助さんは歌舞伎もやっているんですね』という書き込みが多いんです。道行く人にも『あっ、オカマの人だ』と声をかけられるし、先日、あるレストランに入ったら、個室に案内されて『今、調理場は黒崎が来たって大騒ぎです』とも言われました。視聴率のいいドラマはすごいなと思いました」

 半沢を演じる堺雅人の「やられたらやり返す。倍返しだ」のせりふとともに、黒崎のおねえキャラも高視聴率に貢献している。「何よ!」とおねえ言葉で絶叫してにらみ、怒りのあまり部下の股間をつかむ場面は迫力がある。そんな黒崎キャラの人気ぶりを受け、原作者の池井戸潤氏も現在連載中の半沢シリーズ「銀翼のイカロス」に、当初は予定になかった黒崎を登場させるという。

 「僕にとって新境地というか、二枚目役とかよりは、こういう役をしたかったので、楽しくやりました。ただ、ドラマをぶち壊さないか心配だったけれど、役が面白く転がっている感じがする。演じるにあたり、女形をやっていたということもあるし、周りに結構ああいう人がいっぱいいるんです。しぐさなんか、僕の女形の弟子をちょっとモデルにしているところもありますね」

 大阪を舞台にした第5話までは、金融庁から出向した国税官として半沢と対決したが、25日放送の第6話では金融庁に戻り東京中央銀行を検査する主任検査官として登場。半沢に「お久しぶり」とあいさつした。明日1日以降の放送では、半沢との直接対決も多くなる。

 「今までは半沢さんとはすれ違いばかりでしたが、今回は対面して攻撃的な感じです。といっても、僕1人でずっとしゃべってますけれど」

 歌舞伎界の視聴率も高く、尾上菊之助、尾上松緑から「見ましたよ」と言われるという。収録は5月下旬から今月26日まで行われ、歌舞伎座公演や海老蔵の自主公演の掛け持ちとハードスケジュールだったが、それもこれもドラマで愛之助に興味を持った人に歌舞伎を見てほしいからだ。

 「だまされたと思って、歌舞伎を見に来てほしい。絶対、倍返しの面白い舞台をお見せしますよ」【林尚之】

 ◆片岡愛之助(かたおか・あいのすけ)1972年(昭47)3月4日、大阪生まれ。子役として活躍した後、81年に13代目片岡仁左衛門の部屋子となり、片岡千代丸で初舞台。92年に片岡秀太郎の養子となり、6代目愛之助を襲名。上方舞の楳茂都(うめもと)流4世家元も務める。愛称はラブリン。9月は歌舞伎座「新薄雪物語」「陰陽師」に出演する。

 ◆「半沢直樹」

 直木賞作家、池井戸潤氏の小説「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」が原作。型破りな銀行マン、半沢直樹(堺雅人)が、銀行内外の敵と戦う物語。1~5話は大阪を舞台に、半沢が5億円の不良債権に奔走。第6話からは、東京本店に栄転した半沢が120億円の損失隠しをしていた老舗ホテルの経営再建を任される。大阪時代は、国税局査察部統括官の黒崎(片岡愛之助)としのぎを削った。黒崎は出向元の金融庁に戻り、東京で再び半沢と対決する。視聴率は初回から第6話まで19・4%、21・8%、22・9%、27・6%、29・0%、29・0%と1度も下げていない。