林家正蔵(51)の長男海老名泰良(20)が「林家たま平」を名乗って落語家デビューすることが1日、分かった。この日から落語協会(柳亭市馬会長)の前座として正式に落語修業を始めた。曽祖父は7代目林家正蔵さん、祖父は初代林家三平さんで、落語界初の4代続く落語家誕生となる。

 たま平は1日午前、東京・新宿末広亭の楽屋に入り、前座としての修業を始めた。正蔵のもとに入門したのは昨年4月。それから1年4カ月、前座見習いとして師匠のかばん持ち、師匠宅の雑用を務めこの日付で落語協会の前座になった。

 6歳で「こぶた」を名乗って三平一門会の高座に上がったが、本格的に落語家を意識したのは中学3年の時。たま平は「人を楽しませる、こんな面白い仕事はない。中学卒業で入門しようと思った」。しかし、正蔵に「高校までしっかりやれ」と言われ断念。東京・明大中野高でラグビーに明け暮れ、3年の決勝で国学院久我山に惜敗し花園への夢は断たれた。推薦で明大進学の選択もあったが、落語界入りを決めた。

 一昨年の暮れ、祖母海老名香葉子さん(80)に決意を打ち明けた。東京・浅草のてんぷら屋で香葉子さんが「(卒業後)どうするの」と聞くと、たま平は「ばあば、僕に任せてください。跡を継ぎます」。香葉子さんは「驚いたけれど、胸いっぱいになった」。

 父正蔵には昨年4月、入門を願い出た。同居していたが、末広亭の楽屋前で出待ちし「入門をお願いします」と頭を下げた。しかし、正蔵は「ダメだ。もう1度考え直しなさい」と玄関払い。翌日も国立演芸場で出待ちすると、「落語家になっても飯が食えるわけじゃない。生半可な覚悟じゃ入れない」と諭したが、固い決意に入門を許した。

 「ばあば」と呼んだ香葉子さんは「大おかみ」、父正蔵は「師匠」、母有希子さん(51)は「おかみさん」に変わった。「師匠に『味噌(みそ)豆』を教わった時、厳しいダメ出しに泣いてしまった」という。前座名「たま平」は「たまのような男の子」「たまも磨けば光る」「ラグビーの球(たま)」から正蔵が名付けた。「プレッシャーはあるけれど、4代続くことを意識すると、自分を出せない。子供からお年寄りまで笑って、満足してもらうのが目標です」。大玉への進化が始まった。【林尚之】

 ◆林家たま平(はやしや・たまへい)1994年(平6)5月29日、東京生まれ。林家正蔵の長男(姉と弟がいる)。明大中野中・高でラグビー部所属。中学でウイング、高校でプロップ。165センチで、ピークは85キロだったが、今は食事制限などで70キロに減量。日舞の名取で、三味線、ピアノ、茶道を習い、サックス、ギターも。好きなタレントは元宝塚の蘭寿とむ、永作博美。