将棋の最年少プロ、藤井聡太七段(17)が渡辺明棋聖(36)に挑む第91期棋聖戦5番勝負の第4局が16日、大阪市の関西将棋会館で指され、後手の藤井が勝ち、対戦成績を3勝1敗とし、史上最年少で初タイトルを獲得した。17歳11カ月での初タイトルの獲得は、90年に屋敷伸之九段(48)が作った18歳6カ月のタイトル獲得最年少記録を30年ぶりに更新した。
【午前8:47】 藤井入室。1分後、渡辺入室。藤井は白の着物に涼しげな黒色の羽織に和装姿。渡辺はライトブルーの着物に濃い緑の羽織。
【8:49】 互いに一礼して、渡辺が駒箱のフタを開け、駒が並べられる。
【9:00】 対局開始。先手の渡辺は7六歩と角道を開けた。藤井はいつものようにお茶を一口飲み、心を整えてから飛車先の歩を突いた。戦型は矢倉に決まった。
【10:00】 おやつタイム。藤井はオレンジジュースを注文。渡辺は注文しなかった。両対局者の控室にはファヤージュ(焼き菓子)、レモンのクリームサンドが用意されている。対局室に運ばれたオレンジジュースを手にした藤井は、口を潤した
【午前】 午前中は先手の渡辺が細かく仕掛ける。
【昼食】 勝負メシに藤井は、そば・うどん店「やまが」の「味噌煮込みうどん」(850円)を注文した。少しかための麺に卵が入る人気メニュー。藤井の地元・愛知のご当地グルメでもある。渡辺は「内山田」の「スペシャルハンバーグセット」(2000円)を注文した。この日だけの限定メニュー。特製ハンバーグにステーキ、サラダも付いている。
【午後3:00】 2回目のおやつタイム。藤井はアイスティーを注文した。渡辺は午前のおやつタイムに続き、午後の注文はなしだった。対局は中盤戦。形勢はほぼ互角のまま。
【7:11】 藤井が110手で勝利!タイトル獲得最年少記録を更新。「難しい将棋だったかな。最後までどうか分からなかった。獲得できたことは非常にうれしかった。より一層精進していい将棋ができるようにしたい」と振り返った。
【終局後】 記者会見では師匠の杉本昌隆八段も同席して祝福。藤井は「ずっとお世話になってきた。恩返しできたのかな」とはにかんだ。関西将棋会館には100人以上が出待ち。藤井が現れると、ファンから「おめでとう!」の声が飛んだ。タクシーに乗り込んだ藤井は律義に祝福の何度も頭を下げた。
■師匠の杉本昌隆八段(51)「藤井聡太新棋聖の誕生をうれしく思います。10年前、小学生の聡太少年に出会ったときから、この日が来ることを確信していました。これで私の目標や、私の師匠、板谷進九段の夢も1つかないました。東海に持ち帰ったタイトルは大切に、いつまでも保ち続けてください。これからも将棋が指せる幸せと、全ての人への感謝は忘れずに。大棋士に成長することを願っています」
■日本将棋連盟・佐藤康光会長(50)「史上最年少での初タイトル獲得、誠におめでとうございます。見事な内容でした。藤井新棋聖はさまざまな記録を打ち立てていますが、これは破られることはないのではと感じます。ますますのご活躍を祈念いたします」
■羽生善治九段(49)「藤井さんの最近の躍進ぶりを見るとタイトル獲得は時間の問題と思っていました。内容も素晴らしく、目を見張るものがあります。今後も将棋界の新たな道を切り開く存在として活躍されることを期待しています」
■屋敷伸之九段(48)「藤井聡太新棋聖、タイトル獲得おめでとうございます。日本中のファンに注目されるなか、堂々といい将棋を指して、結果を出したのは、素晴らしいことです。今後もタイトル戦は続きますが、いい将棋を作り上げることを期待しています」
■囲碁の井山裕太3冠「のたび最年少記録の樹立、誠におめでとうございます。素晴らしい記録ですが、藤井さんにとっては通過点の1つなのではないかと思います。今後、藤井さんが創られていく世界を、楽しみにさせていただきます」
■囲碁の芝野虎丸3冠「藤井さん、史上最年少タイトル獲得おめでとうございます。多くの方に注目される中でも安定した成績を出し続け、頂点まで駆け上がったのは本当にすごいことだと思います。その結果の陰では、血がにじむような努力を続けてこられたのだろうと想像します。年齢が近いこともあり、藤井さんの活躍をニュースでみると自分もさらに頑張ろうと、勇気をもらえます。この先も藤井さんのさらなる活躍を楽しみにしています」
◆藤井聡太(ふじい・そうた)2002年(平14)7月19日、愛知県瀬戸市生まれ。5歳で祖母から将棋を教わり、地元の教室に通い始める。杉本昌隆八段門下。16年10月、14歳2カ月の史上最年少でプロ(四段)に。史上5人目の中学生棋士でもある。名古屋大学教育学部付属高3年。17年6月、デビューから負けなしの29連勝で、将棋界の連勝新記録を達成。18年2月、朝日杯で史上最年少の公式戦初制覇。同年10月には新人王戦も制した。翌年2月、朝日杯連覇。昨年度、史上初の3年連続勝率8割以上を記録。今年6月8日の第91期棋聖戦では、17歳10カ月20日の史上最年少でタイトル初登場。