キング騎手の「技」が光った。これまで中団から差す競馬をしていたチャックネイトを、馬なりで先行させた。1コーナーを回る時には3番手。これといった逃げ馬不在で流れが遅くなるという読みと、不良で後ろからでは届きにくいコンディションを考えてのことだろう。もちろん陣営の指示もあったとは思うが、積極的にポジションを取りにいったのが一番の勝因だ。

それほど切れるタイプではなく、しぶとい末脚と勝負根性が持ち味。それを最大限生かした。3コーナー過ぎで手応えが怪しくなると、右ステッキに持ち替えてパートナーを鼓舞。本来コーナーでは外へ膨れないように外側(右回りでは左手)に持つのが一般的とされるが、コーナー途中で右に替えたのは、苦しくなって内にもたれるのを矯正するためだ。

さらに直線は、外から並びかけてきたボッケリーニに馬体を寄せ、勝負根性を引き出す効果もあった。レース後、キング騎手も「坂を上がりながらスタミナとファイトを見せてくれた」と話している。早めに気合を注入したことで進路を確保し、闘志をかき立てることができた。鼻差の逆転勝利は、チャックネイトの頑張りを引き出したキング騎手の手腕によるところが大きい。

AJCCを制したチャックネイトとキング騎手(撮影・丹羽敏通)
AJCCを制したチャックネイトとキング騎手(撮影・丹羽敏通)