今月いっぱいでの引退が発表された大井の柏木一夫調教師(72)に思い出の馬を聞くと「ストリートエース」と即答だった。83年に的場騎手で関東盃を勝ち、15戦13勝で重賞初制覇。その2走前まで騎手時代の師が騎乗していたという。父三郎師の管理馬として82年5月に3歳(当時は4歳表記)でデビュー。8月までに無傷の5連勝を挙げた。

父も元騎手。当然のように騎手になったのかと思いきや「オートレーサーになりたかったんだ」と師。大井オートがあった時代だ。だが「危ないから」と母に反対されたという。「修行に出された」と19歳だった70年6月1日に船橋で騎手免許を取得。翌年に大井の父の厩舎に移籍した。

ストリートエースは調教にも騎乗。デビュー前からものが違ったという。5連勝した14日後に父が病気のため他界。父の師匠だった永井師の厩舎に人馬ともに移籍した。師は調教師を目指すことになり、83年1月の転厩初戦から2戦は調教師試験に向けた研修で騎乗できなかったが、その後の手綱を取り、10連勝に導いた。11戦目の2着で連勝記録こそ止まったが、その後また2連勝。同馬の12勝目は83年6月1日に32歳で調教師に転身した師の騎手時代最後の勝利となった。

振り返れば父の後を継いできた競馬人生に「満足です」と師。今日31日の11Rオルトスラッガーで最後の出走を迎える。【牛山基康】