阪神大震災から30年が過ぎました。地震の時は調教助手で、滋賀の家で寝ていたのですが、すごい揺れに驚いて柱の角に隠れたのを覚えています。街が燃える様子や倒れた高速道路などをテレビで見て、馬の仕事をしながら「何かできることはないか」とは思いましたが、実際に何の行動もしなかったことは心に引っかかっていました。あれから30年で被災地は、当時の記憶すら消えてしまいそうなほど復興ができています。

一方で、私が今いる能登は過疎の問題を抱え、もともと30年もすれば誰もいなくなってしまいそうな土地でした。それが今回の地震で5年もかからずに消えてしまうのではないかという状況になっています。震災で一斉に建物がつぶれて撤去され、また建て直そうという人も少ないでしょう。企業の誘致も簡単ではありません。このエリアが30年後にどんな姿になるのか。阪神大震災とは違う被災地のあり方として、モデルになっていくと思います。

そんな中で、馬が活躍できる場所もあります。人の手が入らない土地では、背丈の高い草木がどんどん生えて、農業のできない荒れ地になっていきます。ですが、馬を入れておけば、草を食べたり踏んだりすることで草地を維持できます。

私たちも牧場の「オフグリッド化」を進め、30年後も変わらず持続できる施設を目指しています。水道、電気、通信を自分たちでまかなえれば、近くの住民の方々にとって有事の際の避難先にもなります。

競馬界も30年後にどうなっているか分かりません。今の競馬場は若い人たちが増えてにぎわっていますが、少子高齢化が進んで馬券を買う人が減れば、競馬の運営にも影響が出てくるでしょう。JRAでは売り上げの10%と利益の半分を国庫に納付していますし、さすがに競馬を終わらせることはないにしても、長いスパンで未来を考えていく必要があると思います。

▼角居氏の携わる「みんなの馬株式会社」ではクラウドファンディング(CF)の第2弾を募集している。角居氏は「復興に向けて頑張りますので、ぜひ応援していただければ」と呼びかける。期間は2月28日まで。詳しくはCFサイト「CAMPFIRE」(https://camp-fire.jp/projects/816405/view)で。

砂浜を歩くポニーのテン(角居氏提供)
砂浜を歩くポニーのテン(角居氏提供)