最強牝馬決定戦は人気薄2頭が後続を一時25馬身引き離す大逃走を決め、行った行ったの決着で波乱となった。11番人気クィーンスプマンテ(牝5、小島茂)が田中博康騎手(23)の手綱で人馬G1初制覇。12番人気テイエムプリキュアが2着に粘り込み、断然1番人気のブエナビスタは32秒9の豪脚むなしく3着にとどまった。

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向正面を走る馬群が、前の2頭からどんどん離れていった。クィーンスプマンテとテイエムプリキュアと3番手以下の差は12馬身、20馬身と広がり、坂の頂上の残り800メートル標では4秒以上。実に25馬身まで開いた。場内がどよめき、悲鳴が上がる。田中博は1度たりとも後ろを振り返らず、手綱を強く握り締めた。4コーナーを回る。後続の望みはほぼ絶たれ、逃げ馬の一騎打ち。テイエムプリキュアが迫ったが、その影を感じたクィーンスプマンテはもうひと伸びした。差されてなるか。気迫が勝り、1馬身半差でゴール板を駆け抜けた。

「逃げたいです」。戦前から宣言していた通りの独り旅。人馬ともに迷いなく、スタートを切った。見た目ほど速くはなく、1000メートル通過は1分0秒5。なのに後続集団は動くに動けない。ちゅうちょのない逃げが、ブエナビスタ以下有力馬の脚を封じ込めた。G1初勝利の瞬間、23歳は左手を上げて喜びを爆発させた。ウイニングランを待たずして、左目から涙があふれ出た。それをぬぐうように、馬の首に抱きついた。「こんなに泣いたのは初めてかもしれない。しかも、うれしくて、勝って泣いたのなんて初めてです」。優しい印象とは裏腹に、たくましい精神の持ち主だ。アグネスフライトのダービーに触発されて騎手を目指したが、競馬学校の願書受け付けに間に合わなかった。高校に通いながら受けることを決め、高1で失敗。2度目の受験で合格した。「一番最初に親に報告したい」。励まし続けてくれた親に対して感謝の気持ちがあふれた。

4年目の今年は減量が取れ、夏には大きな落馬負傷もあった。その一方で、シルクメビウスでユニコーンSを勝ち重賞初制覇を飾るなど、転機の年となった。「今日は本当によく頑張ってくれた馬に感謝したい。こういう舞台に常に立っていられるような、そんなジョッキーになりたい」。涙にぬれた瞳が、キラキラと輝いていた。【和田美保】

◆クィーンスプマンテ▽父 ジャングルポケット▽母 センボンザクラ(サクラユタカオー)▽牝5▽馬主 (株)グリーンファーム▽調教師 小島茂之(美浦)▽生産者 社台ファーム(北海道千歳市)▽戦績 21戦6勝▽総収得賞金 1億7340万円

(2009年11月16日付 日刊スポーツ紙面より)※表記は当時