3歳馬の頂点を決めるダービー(G1、芝2400メートル、26日=東京)の追い切りが22日、東西トレセンで行われた。注目馬の追い切りを掘り下げる「追い切りの番人」では、3戦3勝のシックスペンス(牡、国枝)を松田直樹記者がチェック。国枝厩舎では珍しいG1直前の坂路追いでも、新コンビ川田将雅騎手(38)が騎乗したことで微調整を完了。皐月賞組撃破へ手応えを深めた。
◇ ◇ ◇
僚馬が相手にならない。シックスペンスはラスト1ハロン付近で2頭を抜き去った。ゴール直後に示された坂路時計4ハロン52秒2-12秒1の数字にすぐ合点がいった。後半2ハロンは連続で12秒1の高速ラップ。相手は格下の未勝利馬、ジョッキー騎乗…、それらを差し引いても、性能が明らかに違う。国枝師は「反応が速い。見た目はそんな感じじゃないけど、エンジンと筋肉がいい」と話す。直線だけで3馬身半抜けたスプリングSの加速をこの日も見せた格好だ。
国枝厩舎のG1最終追い切りといえば、ウッドチップコースが基本。坂路での最終追い切りは少ないのだが、18年秋華賞(1着)のアーモンドアイ、G1・2着3回カレンブーケドールなど、ツメや脚部をケアしながら馬本位で結果を出してきた実績がある。シックスペンスは2戦目以降、追い切りは坂路。デビュー当初からヒザの蓄積疲労を考慮し、定着している仕上げ方だ。国枝師は「先週、先々週とウッドでしっかりとやっているから、坂路でやりすぎず、軽すぎず。時計も負荷も予定通りだった」と納得の表情を浮かべる。
2週前、1週前追い切り後の懸念も払拭できた。癖なのか、他馬を怖がるのか、それとも苦しいのか、直線で左へもたれたことが気になっていたが、この日は早めに先頭に立っても真っすぐ走り切った。「さすが、川田。うまく手の内に入れて押さえてくれた。まだ緩いから手綱を離すともたれる、と。そこを把握して修正してくれた」と国枝師。「(距離をこなせるように)腹もすっきりして、胴が伸びてきた。(桜花賞馬)ステレンボッシュと同じで、レースに向かうにあたって気持ちの余裕もある。対戦相手、左回りの東京といろいろあるけど、楽しみの方が大きいよ」。距離延長の本番へ手応えをつかんだ。
皐月賞をパスし、ダービー1本。王道ローテではなく、スプリングSからの異色ローテを選択した。ルメール(レガレイラに騎乗)は騎乗できないが、国枝師悲願のダービー制覇へ向けた切り札が川田騎手の起用。G1で何度も名勝負を繰り広げてきた両者だが、意外にもJRA・G1でタッグを組むのが初めてだ。川田騎手が「国枝師、国枝厩舎のためにダービーの称号を」と話したことを伝え聞くと、国枝師は「うれしくなっちゃうな」と頬を緩めた。日曜の祭典へ向け、期待が高まるリハーサルだった。【松田直樹】
◆国枝厩舎&川田騎手 【8 4 4 16】で勝率25%、連対率37・5%、複勝率50%の好成績。重賞に限ると、【0 2 1 2】で連対率40%、複勝率60%。国枝厩舎の名牝アーモンドアイはG1を9勝したが、18年オークス、秋華賞、ジャパンC、19年天皇賞・秋の4勝は2着馬の鞍上が川田だった。
◆国枝栄(くにえだ・さかえ)1955年(昭30)4月14日、岐阜県生まれ。東京農工大を卒業し、競馬の世界へ。JRA通算1075勝(重賞67勝)は現役最多で、関東を代表する調教師。アパパネ、アーモンドアイという2頭の3冠牝馬を育て、4月の桜花賞もステレンボッシュで制覇。JRAのG1を22勝しているが、牡馬5勝、牝馬17勝で牡馬クラシック(皐月賞、ダービー、菊花賞)は未勝利。再来年2月末に70歳定年制で引退となる。

