先日、巨人の大竹寛が現役引退を表明した。20年間やり遂げたのだから頭が下がる。17年から3年間、選手とコーチの間柄で接した。大竹といえば、今や希少価値のある「シュートピッチャー」だった。多少相手が狙っていても、「打てるもんなら、打ってみろ」とシュートで勝負し、ねじふせる姿が印象的だった。

巨人大竹寛(2021年3月21日撮影)
巨人大竹寛(2021年3月21日撮影)

かつての球界で「シュート」の名人と言えば、元巨人の西本聖、元大洋の平松政次、元横浜の盛田幸妃、元巨人の西村健太朗らの名前が挙がる。

平松のシュートは真横に曲がって、差し込んでいくから打者は詰まる。西本のシュートは見送ればボールなのだが、打者には振る直前までストライクに見え、真横ではなく、やや落ちるシュートを投げた。

盛田、西村の2人は真っすぐよりシュートの方がスピードが速かった。真っすぐを投げる時以上にインパクトの瞬間に押し込んで投げるので、ボールにより力が加わる。この2人はシュートを身につけ、世に出た投手と言っても過言ではないだろう。

西村には入団2年目のブルペンでシュートの握りを教え、試投させた。ブルペン捕手からボールの軌道を聞き、「これは使えるな」と思って、次の試合から投げるように伝えた。「シュート」とは言わず、握りと投げ方を伝えただけなので不思議に思ったかもしれないが、素直な性格が習得へとつながった。

巨人西村健太朗(2017年9月24日撮影)
巨人西村健太朗(2017年9月24日撮影)

今から書くことは、あくまでも私の考え方である。変化球はボール半個から1個分動けば、相手のバットの芯を外せる。多くの投手が新たな変化球を覚える時、投げ始めは大きく曲げようとするだろうが、そのような考え方は捨てるべきだろう。

変化球とは、108あるボールの縫い目の空気抵抗で変化する。自分の思うような変化をつけるには、どのようにボールに回転を与えればいいかを第一に考えることが大事になる。インパクトの瞬間にこのポイントで投げればどこからどこまで曲がるか、幅をつかむことだ。

私なりのシュートの習得法をしるしていく。狙うところは、(1)最初はまずホームベースとバッターボックスの間でボールから投げてみる。(2)それで変化しない場合は握りを工夫して、よりバッターボックス寄りに投げてみる。

(3)変化し始めると徐々にストライクに近づけ、(4)最終的にはボールゾーンまでボール1個分余裕のあるコースを狙っていく。打者はコースいっぱいの球は振らない。甘いところからストライクいっぱいに投げるのがこつである。

握りは各自で工夫するのが理想。投球の際、たかがホームベースの幅は43・2センチだが、内角か外角どちらかに投げやすい方があるはずである。内角に投げやすい人はシュートは早く投げられるようになるだろう。シュートを投げる時、ボールになるのを恐れないことで、一番は死球を怖がらないことである。(次回は11月下旬掲載予定)

◆小谷正勝(こたに・ただかつ) 1945年(昭20)兵庫・明石市生まれ。国学院大から67年ドラフト1位で大洋入団。通算10年で24勝27敗。79年からコーチ業に専念。11年まで在京セ・リーグ3球団で投手コーチを務め、13年からロッテで指導。17年から19年まで再び巨人でコーチを務めた。