「ほお」と思ったのは8回表、DeNA山本祐大が代打で出たときだ。この日が誕生日。左翼席のDeNA応援団から「ハッピーバースデー」が流れた。そのとき球場の9割以上を占める虎党からも大拍手が沸き起こったのである。

山本は大阪出身。京都翔英からBCリーグ滋賀を経てDeNA入りしている。関西に縁が深いこともあっての拍手だったとは思うが、正直、今なら誰の誕生日でも虎党は祝福するかもしれない。

それほどゆったりとして時間が流れているということだ。試合前、ベンチで雑談した指揮官・藤川球児は「いまは力をためているときですから」。前日までDeNAに連敗、15カードぶりの負け越しとなったことを受けての感想だったかもしれない。

リーグ優勝を決めているので当然だが、シーズンの残り試合を全部負けても順位には影響はないのである。もちろん満員のファンが入る状況、気を抜いた試合を見せるわけにはいかないが勝敗は無関係だ。

そんな中で、しかし、必死さを持って試合に臨んでいる選手はいる。個人タイトルを狙う面々もそうなのだが、同時に戦力としての生き残りをうかがう立場の選手もそうだろう。

この日、ベテランの域に入っている原口文仁が出場した。「5番・一塁」で今季初スタメン。普段は大山悠輔が締めているポジションだ。ここまでが代打ばかりで、これが11試合目の出場だった。ファーム暮らしも長かったのである。

ここまで11打数で無安打。なんとか1本…。その思いは伝わってくる。しかし3打数無安打に倒れた。「内容も良くないですし、何もできなかった。悔しい思いありますけど、また試合に出られるチャンスがあればしっかり準備したい」。そう話した。

「まだまだエンジンをかけながら、シーズン残りゲームをやりながらですけど個人のことを含めて、みんながいい形でゴールを切れるように」。球児は原口スタメンをそう説明した。

昨オフにFA宣言したが残留。若い選手たちを相手に勝負に出たがなかなか結果が出ない。出場機会も減ってきた。厳しい世界だ。それでも大腸がんを克服し、戦いの場に戻ってきた男からは皆、勇気をもらった。あまり、そういうことは書いていないつもりだが、ここはハッキリ言いたい。原口、頑張れ! と。(敬称略)【高原寿夫】(ニッカンスポーツ・コム/野球コラム「虎だ虎だ虎になれ!」)

阪神対DeNA 練習に励む阪神原口(撮影・上山淳一)
阪神対DeNA 練習に励む阪神原口(撮影・上山淳一)