私立校優位の中に、割って入る態勢を整えているのが、公立校の新発田だ。県内有数の県立進学校は今春、8強入りし、第5シードを獲得した。「夏」が始まるのは佐渡総合-新潟第一の勝者と対戦する2回戦からだ。今春は3、4回戦で2試合連続1点差勝ちした。粘り強さが身上のチームをエース当摩信之介投手(3年)がけん引する。

 マウンドに立つのにふさわしい強心臓を当摩は持っている。強気な性格はまた、リーダーの資質も十分だ。「自分の力を出し切れば、結果はついてくる。言い過ぎかも知れないけれど、みんなを引っ張る存在になりたい。気持ちを前面に出せば、みんなはついてくる」。直球の最速は6月の練習試合で計測した135キロだが、菅勝監督(49)はエースの力量に太鼓判を押した。「直球は打者の手元で伸びる。数字以上の球威を打者は感じるはず」と言った。

 昨夏のレギュラー4人が残り、現チームはもともと打力に定評があった。背番号11の控え投手ながら、当摩も6番中堅手として先発出場していた。その攻撃力に今春、投手力の充実が加わった。冬場のトレーニングの成果だ。冬の基礎トレーニングは今年、野手と別メニューで積んだ。バランス系の練習を取り入れ、下半身を強化した。スクワットは17キロの重りを抱えて繰り返した。「(当摩は)力のある球が高めにしかいかなかったが、今年は低めに決まるようになった」と菅監督は、ひと冬越えて成長したエースの変化を明かした。

 東京学館新潟に2-1で勝った春の3回戦で、当摩は被安打2で完投した。「ベストピッチングだった」と話したが、夏は春を上回る好投を狙う。カーブ、スライダー、チェンジアップと球種は豊富ながら、直球には絶大な自信だ。「真っすぐで三振を奪うと、チームが盛り上がるのを体感している」と言う直球は、6月の計測時より球速アップの手応えを得ている。「夏は簡単な試合は1つもない。9回が終わって1点勝っているような競った試合でも、落ち着いて投げたい」。緊迫した試合こそ、当摩は闘志を内面に秘めながらも冷静になる。【涌井幹雄】

 ◆当摩信之介(とうま・しんのすけ)2000年(平12)5月4日生まれ。胎内市出身。中条中では軟式野球部に所属。鈴木翔太捕手(3年)とは中学時代からバッテリーを組み、県大会ベスト16。高校では1年春に背番号18でベンチ入り。右投げ右打ち。176センチ、81キロ。