広島新井貴浩内野手(38)が甲子園の阪神戦で暴れた。同点で迎えた6回無死一、三塁から勝ち越しの左越え適時二塁打。今季2試合目のスタメン出場で、粘投を続けていた先発黒田を援護した。試合前には阪神関本から忘れ物を渡され、愛されキャラも健在!? 温かく迎えてくれた阪神ファンにもバットで応えた。

 独特のフォロースルーを残し、打球は左翼マートンの頭上を越えた。広島新井は到達した二塁上で手をたたき、右手を高く上げてガッツポーズ。サングラス越しのドヤ顔だった。甲子園を包んでいた大歓声は、悲鳴とため息に変わっていた。同点の6回無死一、三塁で初球の高め直球に反応。プライドを込めた一撃だ。

 「最高の結果が出ました。黒田さんが粘って粘って投げていた。マウンドから伝わるものがあった。絶対にかえそうと思っていた」

 オフには阪神から野球協約の上限を超える減俸を提示され、自由契約を希望。「もう1度勝負したい」と、推定年俸2000万円で8年ぶりの広島復帰を選んだ。マウンドには、ともに8年ぶり復帰で粘投を続ける黒田がいた。得点力不足のチーム状況もあった。奮起の要因は整っていた。

 恩返し打でもあった。広島復帰が決まった直後の昨年11月20日。新井は阪神球団事務所宛てに、直筆の手紙を送った。球団職員1人1人に感謝を込め「長きにわたり、大変お世話になりました。タイガースでの日々は貴重な経験となりました」とつづった。感謝を胸に、ほかでもない勝負の世界に、新井はいる。

 試合前には、こんな出来事もあった。三塁ベンチにトレーニングシューズ、折れたバット3本とともに手紙が置かれていた。「新井さんへ 忘れものです byせきもと」。一塁ベンチに置き忘れていた阪神時代の道具。阪神関本からの“お届け物”だった。これには新井も「忘れ物…。ギャグじゃないかな?」。人望も厚く、愛されるキャラクターは健在だ。

 緒方監督も「(打線に)火を付けてくれたのは新井。さすがベテラン。打線に勇気を与えてくれる一打だった。黒田と新井のベテラン2人に引っ張られて、若手も打った」と目を細めた。この日のスタメンは黒田と新井以外は20代。ベテランの活躍でチームは今季初の敵地勝利&3連勝だ。阪神と同率5位までつめた。「また明日、しっかり打ちたい」(新井)。もう、虎党からの歓声はないだろう。それほど強烈な存在感だった。背中で、バットで、若いチームを引っ張っていく。広島に新井ありだ。【池本泰尚】

 ▼広島に復帰した新井が今季初のV打を放ち、黒田が2勝目。黒田が勝利投手で新井がV打は、07年4月30日阪神戦以来で通算9度目。黒田は日本通算105勝となったが、黒田の勝利試合でV打が多い選手は(1)前田10度、(2)緒方、新井9度(4)野村8度となり、新井は緒方監督に並び2番目に多い。