箱根駅伝ばりのレースプランだった。虎の新人合同自主トレ名物3000メートル走。絶好のアピールチャンスに、ドラフト2位坂本誠志郎捕手(22=明大)はスタートから飛び出した。途中、4位望月、5位青柳の投手コンビに抜かれたが、終盤に再浮上すると、そのままゴール。同距離で行われた、ここ3年間で最高タイム11分21秒でのVだった。
「絶対トップとってやろうと思っていました。短距離は得意じゃないんで、最後に瞬発力でいかれるとまずい。最初からみんなを追い込んでやろうと思っていました」
低い前評判がハートに火をつけた。前日まで、スカウト陣の予想合戦に自分の名前が挙がってこなかった。だから、勝つために自慢の頭脳を回転させた。短距離が苦手。スパート勝負になっては勝ち目がないと読み、あえて最初に飛ばし、高速レースに巻き込むプランを立てたという。自分も苦しくなったが、そこは強いハートでカバー。13年に藤浪が3500メートル走でトップになったが、その記録もラップタイムで上回った。
「続けることだったり、きつい時に頑張れないとやっていけないと思うんで、野球につながる練習だったかなと思います」
過去に校内マラソン大会などで優勝した経験はないが、実家に戻った時など走ることは欠かさなかったという。頭脳とハートでつかんだトップの座だった。
くしくも、11日は同じポジションを争う2歳上の梅野が今年初めて鳴尾浜にやってきた。大学日本代表以来の再会だった。
「今から意識することはないです。自分のやることに集中して、いいところは盗めれば」
周囲を見渡せる冷静な頭脳と、秘めたる熱い心。最大の課題とされる捕手争いに、興味深い男がエントリーしてきた。【鈴木忠平】



