ボクシングにおける、「運」の重要性をあらためて感じた。今月23日、米ラスベガスで村田諒太(30=帝拳)がプロ第11戦のリングに立った。結果は、1回に強烈な左ボディーでダウンを奪い、一気の連打でキャリア最短の112秒TKO勝ち。KOの求められる難しい試合に、3戦連続となる満点回答をしてみせた。

 試合後、陣営の本田会長はWBO王者ビリー・ジョー・サンダース(英国)をターゲットに世界挑戦を目指した交渉に入ると明言した。デビューから3年-。普通であれば、「ついに」と拳を握りそうなところだが、そこは激戦のミドル級。ここからが大変だ。

 現在のこのクラスほど、村田を含めた世界ランカーにとって厳しい階級はない。「最強王者」ゲンナディ・ゴロフキン(カザフスタン)がWBA・WBC・IBFの3団体を統一していることが最大の理由だが、そこに抜群の人気を誇る「カネロ」こと元2階級制覇王者サウル・アルバレス(メキシコ)が加わってきそうだからややこしい。

 カネロは昨年11月にWBCミドル級王座を獲得。当時、WBC暫定王座を保持していたゴロフキンとの統一戦がうわさされたが、このタイミングでは実現せず。王座を返上し、ゴロフキンが正規王者に承認された経緯がある。だが、今年12月にミドル級最後の1本のベルトを持つサンダース戦がうわさされ、来年9月にはゴロフキンとのビッグマッチが交渉されているとも伝えられる。

 村田が契約する米プロモート大手トップランク社のボブ・アラム氏は、世界戦について「来年になるだろう」と話した。前述の試合の交渉が優先される可能性は高く、現実的には試合を重ねながら、チャンスを待つ形になるだろう。

 現在の状況だけを見れば、村田にとって「バッドラック」かもしれないが、ここに食い込んでいくことができれば、これほど世界から注目を受ける舞台はない。また、交渉も試合もふたを開けてみるまで結果は分からない。1試合で局面は大きく変わっていくだろう。粘り強い交渉と、「幸運」の先に、村田が世界挑戦するシーンを待ちたい。【奥山将志】