境川部屋の関取衆4人は、豪栄道の変化に気づいていた。夏巡業後の稽古再開初日。佐田の海は豊響と目を見合わせた。「大関、重くなったな」。毎日胸を合わせる分、わずかな違いにも気づく。豊響は「自分が言うのも何だけど、稽古場の相撲が全部、本場所に出せているんだと思う。稽古場ではめちゃくちゃ強いですから」と、初優勝にもそこまで驚きはなかった。

 九州場所担当部長で2日目から福岡に出張した師匠の境川親方(元小結両国)は「豪太郎、お前がしっかり引き締めんといかんぞ、大関なんだから」と、留守中の部屋を託した。豪栄道も期待に応えるように、若い衆にも声をかけ、貫禄たっぷりに稽古を締める。「ピリピリしてますよ」(豊響)「(13日目の)勢は小手投げがあるから気をつけろと助言してくれた。その通りだった」(佐田の海)。本場所で初めて師匠が不在という中、より一層、責任感が芽生えていた。

 関取衆にとってはもちろん、期するものもある。埼玉栄高でも同期の妙義龍は「そりゃ刺激にはなるよ、こんなの見たら」。佐田の富士も「いつも稽古してるわけですから」と負けん気をのぞかせた。おとこ気たっぷりの師匠に育てられた大男たち。部屋の優勝第1号誕生に、このまま黙っているはずがない。【桑原亮】