個性派の人気者が、14年間の土俵人生に別れを告げた。最高位は前頭3枚目。西幕下36枚目の照強(29=伊勢ケ浜)が、会場のエディオンアリーナ大阪で引退会見を行った。前日9日目に引退届を提出、受理されていた。会見では「悲しい気持ちも、さみしい気持ちもあるけど、第2の人生に向けてワクワクした気持ちもある」と話し、ほほ笑んだ。相撲協会には残らず、今後は「未定」という。ただ約1年前、驚きの夢を語っていたことがあった。

照強 「引退したら爬虫(はちゅう)類カフェをやりたいんだよね。生き物全般が好き。犬も猫も好きだけど、爬虫類がいい!」。

子どものように無邪気な表情で話していたのが印象的だった。22年に結婚した加奈夫人は実業家。仲むつまじい夫婦で照強の夢には協力を惜しまないだろう。

現役時代は169センチ、100キロ余りの小柄な体ながら多彩な技、取組前の豪快な塩まきでファンを魅了した。思い出の一番に20年7月場所14日目、当時大関の朝乃山戦を挙げた。奇襲の足取りで勝ち、同部屋の照ノ富士の復活優勝をアシストしたのは「相撲人生の中の誇り」と胸を張った。この日「頑張れよ」と声を懸けて励ました尊富士ら弟弟子には「一ファンとして応援したい」と陰から見守ると約束。人間味あふれる照強だけに、相撲界を離れても周囲に愛されるはずだ。【高田文太】(ニッカンスポーツ・コム/バトルコラム「大相撲裏話」)

朝乃山(左)は立ち合いで照強の変化について行けず足取りで敗れる(2020年8月1日撮影)
朝乃山(左)は立ち合いで照強の変化について行けず足取りで敗れる(2020年8月1日撮影)