西前頭2枚目の朝乃山(25=高砂)が、無敗の横綱鶴竜を破り、初金星を挙げた。得意の右四つから寄り切る完勝で3勝2敗とした。

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ある意味、朝乃山にとってラッキーだったのは、鶴竜が安易に打った右の下手投げだ。あれで朝乃山は左上手を十分に引きつけられた。ラッキーではあるが、そうさせるだけの前に出る馬力が朝乃山にはあった。

負けはしたが攻め込んだ前日の遠藤戦、引かせた3日目の貴景勝戦も内容は悪くない。高見山さん、富士桜さん、私や小錦もそう。四つと押しの違いはあるが、いちずに前に出る相撲は高砂部屋の伝統。その姿勢を朝乃山は見せてくれた。場所前は蜂窩(ほうか)織炎で満足に稽古できなかったから「とにかく前に出ればいい」とだけしか師匠として言わなかった。朝乃山も万全ではないから、その一点に集中して臨んでいるのだろう。前に出れば自然とまわしを取れて四つになれる自信は、優勝した経験が大きい。余計なことを考えずに臨めているのがプラスになっていれば、まさにけがの功名だ。(高砂浦五郎=元大関朝潮・日刊スポーツ評論家)