新横綱照ノ富士(29=伊勢ケ浜)が、東前頭筆頭の隆の勝(26=常盤山)を寄り切りで下して3戦全勝とした。

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体を生かしたスケールの大きさだけではない、粋な相撲を照ノ富士は取りました。立ち合いから激しい攻防の後に再度、向き合った後のところです。隆の勝は本来、右を差すのが得意でその形になると勝てる相撲を取ります。さらに隆の勝はこの日、もろ差しを狙いました。ところが照ノ富士は隆の勝に、あえて左を先に差させたんです。隆の勝からすれば右も入り願ったりの浅いもろ差し。気持ちが少しでも安心し落ち着いたことで、隆の勝の動きが止まることを照ノ富士は読んでいたんでしょう。

わざと差させた左(照ノ富士からは右)は、しっかり引っ張り込んで、あとは抱えてきめて、引きつけて出るだけ。隆の勝に左を差させることで「もろ差しになった」と錯覚させる考え方は、やはり1枚も2枚も上手です。対戦相手を考えて、稽古場から仮想してやっているんでしょう。相手を術中にはめる、こんな細かい相撲も取れる。「この手があったか」と感心しました。(日刊スポーツ評論家)