17日にAKB48選抜総選挙が今年も終わった。参加しているメンバーの比にはならないが、担当としてこの日に向けてさまざまな取材にあたっていた者としても、どこか肩の荷が下りたような、多少の安堵(あんど)感を感じている。

 メンバーが何を感じ、どのような思いでこの選挙に臨んでいるのか。そういった部分などを知るための手段のひとつとして、今年も選挙期間は動画配信アプリ「SHOWROOM」をほぼ毎日見ていた。「SHOWROOM」は、メンバーが自宅や仕事先から自分の姿を生配信しながらファンと交流する新たなツールとして使われている。アプリをダウンロードして無料登録すればパソコンやタブレット、スマホなどで誰でも見ることができ、配信中にコメント欄にコメントを書き込むことで、配信主とリアルタイムに交流することが可能だ。

 しかし、動画視聴においては大変な部分も多かった。ゲリラ的に日中の時間や夜の編集作業が忙しい時間帯に配信が始まることも多く、日常業務をこなしながらくまなくチェックするのは困難だ。よって、移動中などのスキマ時間にスマホで配信をチェックしていた。複数メンバーが同時刻に配信を行うことも珍しくないことから、比較的余裕を持って視聴可能な日には、スマホ、タブレット、パソコンを使い、3画面同時に配信を見たこともある。しかし、結局どの配信の模様も全く頭に入ってこず、以降は誰か1人に絞ってしっかりと配信を聞くようになった。

 また、動画配信の視聴はスマホなどではかなりの通信量を消費することになるので、ポケットWiFiなどを駆使しても足りず、月の序盤で高速データ通信が不可能となり、仕事や日常生活に若干の支障をきたすこともしばしばあった。

 それでもなるべく見ておきたい理由はある。ぬいぐるみやベッドなどが映り込んだ自宅での配信や、寝起きのパジャマ姿やすっぴんでの配信も珍しくなく、よりプライベートに近い環境で配信を行っているため本音も出やすく、人柄も分かりやすい。卒業発表などの重大発表も配信で行われることもある。個人的に近況や人物などをつかむ上での重要なツールとして「SHOWROOM」は必要だと感じ、今年の選挙前にはスマホの通信量を5ギガバイトから20ギガバイトまで上げ、ポケットWiFiも複数持つなどした万全の態勢で総選挙に向けた視聴ウイークに入った。

 同選挙では昨年から同アプリと連携し、選挙本番の3週間ほど前から本番前日までの期間で、見ている者が動画配信中の配信主(立候補メンバー)に対して贈る無料ギフト(星)で得られるポイントで、配信主を順位付けする企画を行っている。今年は、昨年の同企画で1位になったNGT48の中井りか(19)と、AKB48チーム8の大西桃香(19)の同い年の2人による壮絶な首位争いが繰り広げられた。

 大西は朝5時半からの早朝配信を毎日行う「朝5時半の女」として知名度を上げたメンバーだ。新女王への思いは強く、今年はデッドヒートの末、中井を振り切って新女王の座に輝いた。今年の同企画は昨年と比べると、総選挙の上位常連メンバーよりも、NGT48やチーム8、できたばかりのSTU48による配信が多くみられた。中でもチーム8メンバーは昨年の同企画ランキング16位以内に誰も入っていなかったが、今年は4人がランクインするなど、大西の女王奪取が示すように、この企画へ力を入れてきていた。そんなさまざまな思惑のうごめく各メンバーの配信を集中して見る日々を約3週間過ごした。

 今ではファンが配信を見てメンバーを下見し、その上で握手会などで会いに行くということも増えてきているという。私もSTU48など、まだあまり取材したことのないメンバーの配信を目にし、それぞれの人柄などを少しは知ることができた。

 これからも同アプリでの配信は続く。ファンからすると推しの子の配信を見ればいいわけであるが、まんべんなくチェックしたい人にとって、同時配信問題はなんとかしてほしい悩みの種のひとつだ。複数の人物の声を聞き分けたという聖徳太子は一体どうしていたのか。そんなことを考えながら今年も選抜総選挙が終わった。