20年の東京オリンピック(五輪)チケット販売が話題を呼んでいるが、官製の「日本博」など五輪関連の文化イベントも目白押しとなっている。その中で注目したいのが、野田秀樹(63)が総監修を務める「東京キャラバン」だ。20年東京五輪の公認文化オリンピアードの1つで、15年の東京・駒沢公園を皮切りに「旅する文化サーカス」として全国を巡演し、16年のリオ五輪の時にも遠征している。

今年も5月の福島・いわき市をはじめ、10月の埼玉、11月の富山、12月の岡山と北海道を予定している。野田は「20年だけが大事じゃない。その後も残るものを作ろうと思っている。これまでも現場では楽しんでもらっているけれど、全体に浸透していないので、まだ東京キャラバンの認知度が低い。もっと知って欲しいし、五輪で終わりではなく、その後も続けていきたい」と話す。これまでも松たか子、宮沢りえ、黒木華ら有名女優も参加している。駒沢公園、京都・二条城、福島・相馬など4回も出演した松は「出会いが面白く、刺激ある経験でした。芸能も最初は怪しいものだったり、信用ならないものだったりしても、続けていくことで伝統になっていくと思う」。

「文化混流」として、公演を行う地元の芸能も取り入れている。野田は「出たとこ勝負でやる演出家なので、初めて見るものばかりだったけれど、すばらしいものが多かった。表現者として普段見られないものを見られて、得をした気分だった。秋田のナマハゲは、意外と緩いなと思った」。

五輪直前の来春には、都内の代々木公園か明治神宮でやる予定。「集大成とは言わないけれど、節目にしたい」と言う。そして、五輪後の文化行政にも注視している。「今は五輪だからと、行政もお金を出しているけれど、20年から行政が文化に本気度があるかが問われると思う。文化予算が減らされる中、むしり合っているのが現状。英国は不況になっても、文化予算は削らなかった。文化にはすぐ結果は出ないけれど、共同体として大きな力になるものと理解して欲しい」と訴える。スポーツと文化、どちらかに偏重することなく、両輪がバランス良く回転することが、健全な姿だろう。

【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)