今、最も注目される落語家の桂宮治(44)の真打昇進披露興行が2月中席(11~20日)の新宿・末広亭夜の部から始まります。

化粧品のトップセールスマンだった頃に、ユーチューブで桂枝雀の落語を見て、落語の面白さに開眼。31歳の時に落語界に転身しました。お客さんを楽しませることに徹した全力投球型の爆笑落語で頭角を現し、先輩5人を抜いての抜てきで真打ち昇進を決めました。所属する落語芸術協会では春風亭昇太会長以来、29年ぶりの抜てき昇進です。

本来なら、派手に披露パーティーを行うところですが、7日に予定される披露パーティーは時節柄、飲食・会食なしで、1時間ほどと時短を優先したコロナ仕様の異例のものになるそうです。その分、持ち帰る引き出物などで工夫を考えているようです。

末広亭の興行は桂文珍、笑福亭鶴瓶、立川談春らが日替わりでゲスト出演する豪華版ですが、緊急事態宣言が継続する場合は、客席は前後を空けて半減となり、終演も通常の午後9時から1時間早まって夜8時の予定です。

コロナ禍で落語界も苦しんでいます。いつもの正月の寄席だと、大入り満員でにぎわいますが、今年は都内の感染者が急増し、8日には緊急事態宣言も発令されたため、例年の4分の1ほどの観客数に落ち込みました。そして、上野・鈴本演芸場で17日に落語協会の前座1人、18日に同じく前座3人の陽性が判明。さらには20日には落語協会最高顧問の鈴々舎馬風(81)と桃月庵白酒(52)が陽性と分かりました。

そのため、鈴本演芸場では18日からの公演の中止を決め、休席は3月20日まで続く予定です。浅草演芸ホール、池袋演芸場も、落語協会の興行となる1月下席(21~30日)は休席となりました。一方、新宿・末広亭の1月下席は、感染者が出ていない落語芸術協会の興行のため、予定通り行われています。

昨年も落語界では3月から5月にかけて寄席興行が中止となり、人気講談師神田伯山の襲名披露興行も国立演芸場の公演が中止になったほか、落語協会、落語芸術協会ともに真打披露興行を延期する事態になりました。

宮治の披露興行は、末広亭を皮切りに浅草演芸ホール、池袋演芸場と続きます。宮治のはじけた明るい高座が、苦境にある落語界の一筋の光になってくれるかもしれません。【林尚之】(ニッカンスポーツ・コム/芸能コラム「舞台雑話」)