第29回日刊スポーツ映画大賞・石原裕次郎賞(日刊スポーツ新聞社主催、石原プロモーション協賛)が5日、決定した。授賞式は28日、東京・紀尾井町のホテルニューオータニで行われる。

 宮沢りえ(43)が「湯を沸かすほどの熱い愛」で主演女優賞を受賞した。死を覚悟した母親の家族愛を演じた。「私の母が余命宣告を受けた時のことを思い出しました」。2年前に亡くなった光子さん(享年65)への思いが演技を支えた。

 余命宣告を受けながらもいじめに遭う娘に勇気を与え、バラバラになった家族をまとめていく。強くてたくましい母親だ。「余命宣告された人のリアリティーは自分の一番そばにいた母がそういう最期を遂げましたから。私にも7歳の娘がいるので自分ならどう生きるか、何を残すか、撮影中ずっと想像していました」。

 主演女優賞は2年ぶり2度目。「ヨーイ、スタートからカットまでは役に入りますけど、それも私の生きる時間の一部なのかなと最近思います。そこに湧いてくる感情は単純に演技だけではなく自分の思いなんだと思います」。

 メガホンをとった中野量太監督(43)はこれが初の商業映画。「いただく台本は中途半端な状態で読みたくないので、仕事に区切りがついた時に開きます。今回はちょうど前の作品が終わった瞬間に届いた。ラストは過激だけど全体に人間的なものが流れている。(監督は)私と同い年で商業的な作品は初めて。すごく興味がわいたんですね」。

 終盤、衰弱した姿はリアルだった。「台本には『ほおはこけ、目はぎょろり』とあったけど、5日間もらえれば」と体を作った。「5日間だと食事より水分の問題。可能な限り抜きました。短期間だから我慢できたのかもしれないですけど」。今後については「自分(の演技)に飽きっぽいんです。360度どこ行くか分からない振り子のような感じ。全く別の方向に振れた役をやってみたい」。【相原斎】

 ◆宮沢(みやざわ)りえ 1973年(昭48)4月6日、東京都生まれ。88年映画「ぼくらの七日間戦争」で女優デビュー。89年「どっちにするの。」で日刊スポーツ映画大賞新人賞。02年「たそがれ清兵衛」で日本アカデミー賞最優秀主演女優賞や日刊スポーツ映画大賞助演女優賞。14年「紙の月」で日刊スポーツ映画大賞主演女優賞。168センチ。血液型B。

 ◆湯を沸かすほどの熱い愛 余命宣告された双葉(宮沢りえ)は蒸発した夫(オダギリジョー)を家に連れ戻し、自営の銭湯を再開させるなど終活を始め、娘の安澄(杉咲花)らと旅行に出掛ける。中野量太監督。 <主演女優賞・選考経過> ノミネート時点から宮沢を推す声が圧倒的で「何よりも作品に恵まれ、作品を高めた」(渡辺武信氏)と評価された。「男をだます手練手管は彼女でないとできない」(伊藤さとり氏)と評された大竹しのぶとの決選投票を制した。