上方喜劇を代表する役者だった故藤山寛美さんの孫、松竹新喜劇の藤山扇治郎(31)が10日夜、結婚を電撃発表した。その相手は、宝塚歌劇団の元星組トップスター、北翔海莉(ほくしょう・かいり)だった。

この北翔、異色の経歴を持つ元トップだ。宝塚音楽学校には「ほぼ最下位」で入学。なにせ「父も兄も海上自衛隊で、私も子供のころは自衛隊に入ると思っていました」と振り返る通り、宝塚受験のレッスンなど、何もしていなかった。

入学後も、周囲はみな幼少時から、ダンスや歌のレッスンに通っていた逸材ばかり。試験のたびに汗を、いや、冷や汗を流し、成績をあげていった。

ただ、入団後も順風ではなかった。月組から宙組へ移り、12年7月にはいったん専科へ移る流浪の宝塚人生。専科時代には、スター格で全組への出演を果たし、15年5月、まさかの人事で、星組トップへ“返り咲い”た。

北翔は、資格の習得も趣味で、何より「勉強する。学ぶということが好き」。歌舞伎はもちろん、大衆演劇や、各種芝居公演を見学し、舞台人としての心構え、所作を学び、その一環で、扇治郎の伯母・藤山直美と旧知の仲になっていた。

トップ時代は、歌、ダンス、芝居と3拍子そろった劇団きっての実力派として知られ、女性であるタカラジェンヌには難しい殺陣を含めた和物作品も得意とし、退団公演も「桜華に舞え」で桐野利秋を演じた。

一方で、料理が得意で、女性らしい一面も。以前「得意というか、言われれば、何でも作れますよ」と話していたことがある。

あきらめず、ぶれないいちずさと、料理好きで家庭的な面もある北翔と、昭和の喜劇王の孫ながら、腰が低く、人当たりの柔らかい扇治郎。

彼は、礼儀正しく、好青年を絵に描いたような男だ。いつも笑顔で、ひょうひょうとしていながら、関西では折り紙つきの血統への重圧を胸に隠して、偉大な祖父と同じ松竹新喜劇へ進んだ強さもあわせもつ。

4月の初共演舞台の取材時、すでに息はぴったりだった。お似合いの夫婦になれそうだ。