巣ごもり生活の楽しみのひとつだった韓国ドラマ「世界で一番可愛い私の娘」が15日放送の第54話で終了した。ちょっとだけセカムス・ロスの気分である。

下町風の食堂を営むたくましい母親ソンジャ(キム・へスク)とそれぞれに個性的な3姉妹の物語。古くは「肝っ玉かあさん」、近作では「渡る世間は鬼ばかり」に近いテイストだが、バリバリのキャリア・ウーマンである次女ミリ(キム・ソヨン)の比重が大きくて、企業ドラマの色合いも加味されていた。

要は韓国社会を多面的に映す構成で、橋田寿賀子さんばりの説明セリフが分かりやすく、物語にすんなり入っていけた。

本国で最高視聴率33・6%を記録した人気ドラマらしく、脚本には終わらせないための伏線がどんどん加えられ、逆に終盤では着地するための冠婚葬祭がたて込むことになった。

そこで感じたのは、今まで違いばかりが目についた隣国の儀式の共通点である。結婚式では、一家はキリスト教と無縁だったはずなのにウエディングドレスに神父の祝福。友人の歌披露という余興も日本でよく見る光景だ。

通夜振る舞いの食事の席では、親族とのやりとりやちょっとやかましい友人たちの様子に変わらないものを感じた。もちろん作法には違いが多々あるのだが、喜怒哀楽の思いはすんなりと伝わってきた。

おうち時間が長くならなければ、見なかったはずのドラマだが、いつの間にか隣国理解につながったのではないかと思っている。

民放のドラマは再放送モードが続き、いよいよNHKでも連続テレビ小説と大河ドラマが6月に中断となる。今のところWOWOWの「グッド・ドクター3」「スーツ ファイナル・シーズン」「FBI 特別捜査班」が新作欲求に応えてくれる作品だが、これも週1回放送なので、月~金曜放送だった「世界で-」に比べると物足りない。

一方で、テレビ東京では木曜の昼にクリント・イーストウッドの旧作映画を放送するようになった。先日の「タイトロープ」(84年)は、近作とはひと味違うサイコサスペンスを改めて楽しめた。巣ごもり生活にも新発見、再発見がある。【相原斎】