女優小川紗良(24)主演の映画「ビューティフルドリーマー」(本広克行監督)が6日、公開初日を迎える。このほど小川が日刊スポーツのインタビューに応じ、濃密な撮影を振り返った。

大学の映画研究会を舞台にした青春作品。小川は、監督としていわくつきの台本を映画化する映研メンバーのサラを演じる。早大在学中は自身も映画サークルに所属し、現在映画監督としても活動する。主演は本広監督の指名で「あて書きのような役をいただけて、本当にうれしかったです」と笑顔を見せる。

境遇の重なりもあり、現場では学生時代に立ち戻る感覚があったという。「映画サークルってそんなに陽の当たる場所じゃなくって」と笑いつつ、「そういう人たちが同じ目的を持って『映画を撮ろう!』となると、そこにはそこなりの青春がある。どこにいても青春ってまぶしいんだなと思いました」。

物語は部室に眠る8ミリフィルムを発見することから始まるが、小川自身にも同様の体験があるという。「名前も知らないような先輩たちの8ミリフィルムが残ってるんです。それをある日部室の倉庫から見つけてきて、みんなで見てみようって。映写機のかけ方をググって、やってみたことがありました」。

監督に名乗りを上げたサラは、夢中になるあまり演者やスタッフに難題を突きつけるが「欲望のままにむちゃぶりをしたり、めちゃくちゃなことを言ったり。その破天荒さは自分にはないなと思います(笑い)」。役者にスカイダイビングを求めるシーンには「劇中のサラは『飛べますか?』って聞いちゃうんですけど、実際の私はそこの倫理観はあります。安全とか、一応考えます」と笑った。

製作に関わる全てを監督に一任し、“監督絶対主義”を掲げる新映画レーベル「CinemaLab(シネマラボ)」の第1弾。完全な脚本を用いず、俳優の即興演技「エチュード」で作り上げた実験的作品だ。「どのタイミングでどう入ったらいいのか」と当初は戸惑ったが、芝居では俳優同士の関係性の大切さを実感。「現場にトランプを持っていったり、ご飯を食べながら話し合いをしたり。その時間もチームワークに役立ったなと思います。映研メンバーですごく仲良くなりました」と振り返る。エチュードならではの“脱線”を楽しむ本広監督の姿勢には「監督が醸し出す空気って伝染するので、楽しそうに構えていることって大事だな」と、監督視点での学びも語った。

公開を待つ自身初の長編監督作「海辺の金魚」を準備中、今作の撮影に参加。昼は女優として役を演じ、夜は監督として脚本執筆に励んだ。映画にどっぷりの日々を過ごし「監督として作品に向かうリアルな気持ちがそのまま映画にも生きたと思います」。狭い部室で映画作りに情熱を注ぐ部員たちの姿は、コロナ禍の今こそ胸に迫るといい「人の距離の近さみたいなものを楽しみに、劇場に来ていただけたら」と話した。【遠藤尚子】