東出昌大(33)がボクサーにふんした映画「BLUE ブルー」が9日、公開された。

先日、メガホンを取った吉田恵輔監督(45)とのトークイベントがあり、東出らしいエピソードを聞いた。

ボクシング経験のある吉田監督のリアルな演出に応えるべく、8カ月がかりでボクサー体形への肉体改造を行った東出の思いは強い。いち早く試写を見て感動が抑えられなくなり、すぐに吉田監督に電話を入れたという。

「素晴らしい作品です!」「やって良かった!」うんぬんかんぬん…。

だが、ちょっと気になったのは吉田監督の反応が薄かったこと。「ふんふん」「そうかそうか」。それもそのはずである。相手はヨシダ違い、東出のデビュー作「桐島、部活やめるってよ」(12年)の吉田大八監督(57)だったのである。啓輔監督と疑わない東出は現場を共にした「同志」のつもりで熱く語り続けた。

監督作「騙し絵の牙」(大泉洋主演)が公開されたばかりの大八監督は「BLUE-」のことを知らなかった。同じ名字の啓輔監督が撮っていることも分からなかった。東出の年齢を考えると、兄貴分的年の差の啓輔監督に比べて、親子ほどの違いがある。「なぜ今、この私に」という疑問は拭えなかったが、デビュー作で縁のあった『教え子』であり、昨年は私生活でいろいろあった東出が作品に恵まれたことだけは分かり、ともあれ相づちを打ち続け、そのまま電話は終了した。

後日、大八監督は「私は知らなかったが、東出が出ている『BLUE』はいい映画らしい。本人がえらく熱く語っていた」といった趣旨のことを周囲のスタッフに話した。それが伝言ゲームのように巡り巡って恵輔監督の耳にも入った。

恵輔監督は「東出が作品を気に入ってくれたことは分かったが、なんで俺に直接言ってくれないんだ」と訝(いぶか)ったが、東出の意図は不明だし、直接連絡することは無かった。2人が「BLUE」のキャンペーンで再会して「ヨシダ違い」の謎が解けるまでにはかなりの日数が掛かったそうだ。

ボクシング熱がおさまらない東出は撮影が終わった今も、出演者でただ一人、練習を続けている。良くも悪しくも何事にも一途。そしてほほ笑ましいくらいに、ちょっと抜けたところがある。やはりこの人には「隠し事」は難しいのかも知れない。