浦和レッズのFW興梠慎三(32)が、劇的ロスタイム弾で“カズ超え”を果たした。1-1の後半ロスタイム、相手DFに当たって弾んだボールを冷静に決めた。値千金のゴールで、浦和に6試合ぶりの白星をもたらした。ホームでの連敗も3で止め、大槻毅監督に就任2試合目で初勝利を贈った。

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試合終了の瞬間が刻一刻と近づいていても、興梠は冷静さを失っていなかった。後半48分。途中出場のFWマルティノスが自陣左サイドからドリブルで仕掛けると、興梠はボールをもらいにいかずに距離をとった。「マルちゃんはスピードがあるので、近づくより離れてスペースをつくってあげた方がいいのかなと」。

点取り屋がはじき出した、勝負どころの読みは的確だった。マルティノスがペナルティーエリア手前までボールを運ぶと、ゴール前にパス。相手DFに当たったボールは大きな弧を描いてゴール前へと弾んで、興梠のもとへ。冷静に右足でゴールネットを揺らした。「非常に疲れていたので、逆にリラックスして打てたのかな」と笑いつつも「ああいう場面で落ち着いて決めるのがFW。いいゴールだったと思います」とうなずいた。

ホームの連敗を3で止めた決勝点は、記録づくしの一撃となった。J1通算140得点目で、横浜FC三浦を抜いて単独6位。レジェンドを抜いたことに「うれしいですね」とほおを緩めつつも「まだ上には上がいるので、1つでも上に行けるように」と高みを見据えた。

浦和が誇るレジェンドにも、ゴール数で肩を並べた。クラブ通算91得点目は福田正博氏と並んでトップタイ。「並べたことはすごくうれしい」と素直に喜ぶ一方、先人への敬意も欠かさなかった。「サポーターからみれば、福田さんは頂点の存在。レッズといえば興梠慎三と言ってもらえるように。レジェンドになれるか分からないけど、そこを目指して頑張りたい」と満足せず、あらためてチームのためにゴールを積み上げていく覚悟を示した。

大槻監督就任後は、2試合連続のロスタイム弾で1勝1分け。チームは上昇ムードをつかみつつある。「前の選手が点を取るとチームが勝てる。自分たちが取らないと勝てないなとつくづく感じたゲームだった」。雨上がりの肌寒い中、駆けつけた大勢のサポーターの後押しを受けた浦和が、ホームで逆襲ののろしを上げた。